2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヘミメチル化認識因子NP95による成体海馬ニューロン新生制御メカニズムの解明
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13J09561
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
村尾 直哉 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 成体ニューロン新生 / エピジェネティクス / NP95 / 神経幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においてはNP95の欠損によるニューロン新生の解析として、成体神経幹・前駆細胞の分化に対する影響の解析を行った。昨年度までの解析より、NP95の欠損により成体神経幹・前駆細胞のニューロン分化が抑制されることを明らかにしている。そのため、NP95を欠損した成体神経幹・前駆細胞がType1神経幹細胞のまま留まっている割合、及びアストロサイトへと分化した割合を調べた結果、NP95の欠損によりType1神経幹細胞及びアストロサイトの割合の上昇が観察された。この実験により、ニューロンへと分化できなかった神経幹・前駆細胞は未分化のType1神経幹細胞まま維持される、若しくはアストロサイトへと分化することが示唆され、NP95欠損による神経幹・前駆細胞のより詳細な動態変化が明らかになった。このことは神経幹・前駆細胞におけるNP95の役割を解明するうえで非常に意義深いものであったと考えられる。 また成体海馬歯状回に加え、成体神経幹細胞が局在するもうひとつの領域である側脳室前方上衣下層においてNP95のニューロン新生への関与を調べた。その結果、側脳室前方上衣下層においてもNP95の欠損により神経幹・前駆細胞の増殖やニューロン新生が抑制されることが明らかになった。このことより、NP95は成体海馬歯状回、 側脳室前方上衣下層どちらの神経幹・前駆細胞においても重要な役割を果たすことが示された。 さらに、NP95の機能解析を側脳室前方上衣下層と海馬の歯状回部位の組織から2種類の成体神経幹細胞を単離、培養した。この細胞を分化誘導したところ、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化が確認されたことから、成体の均一な神経幹細胞(NS細胞)が得られたと判断した。この細胞の利用することでin vitroにおいてもNP95のターゲットの探索などの機能解析が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、得られたデータをもとにひとつ目の論文を投稿し受理された。また、NP95の機能解析も順調に進行しており、NP95が成体神経幹・前駆細胞の増殖・分化のみならず、新生ニューロンの成熟にも寄与していることを明らかにした。また、それらのメカニズムの解明にも着手しており、いくつかの遺伝子の発現変化がNP95の欠損によって引き起こされる成体ニューロン新生抑制メカニズムの一端を担っている可能性を示した。このような理由から当研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下に挙げる2つの項目に着目し、研究を遂行していく予定である。 1) 成体神経幹細胞におけるNP95の標的因子と標的ゲノムDNA領域の同定 NpP95cKOマウスの成体神経幹細胞から採取しNP95が欠損した成体神経幹細胞において遺伝子発現がどのように変化したのかを次世代シーケンサーを用いたRNA-seq法により解析する。また、同時に遺伝子の転写調節領域のメチル化状態の変化を Post-bisulfite Adaptor Tagging (PBAT) 法により解析する。これらの網羅的な解析によってNP95を欠損した成体神経幹細胞で遺伝子の発現レベルが上昇し、且つその転写調節領域のメチル化が減少したものが見つかれば、その遺伝子はNp95の欠損によりメチル化状態の維持が破綻した結果、遺伝子の発現レベルが上昇した可能性が考えられる。さらに、その領域へのNP95結合をクロマチン免疫沈降 (ChIP) 法により調べる。これらにより、成体神経幹細胞においてNP95によって制御される遺伝子とゲノム領域の同定を行う。また、培養成体神経幹細胞でその因子をノックダウンし、成体神経幹細胞の増殖や分化に対する影 響を調べることで、その因子の成体ニューロン新生における重要性を確認する。 2) 成体ニューロン新生が関与する海馬依存的な学習・記憶形成におけるNP95の役割の解明 海馬における成体ニューロン新生は海馬依存的な学習・記憶形成に必須である。そこで、NP95のcKOマウスとそのコントロールマウスに対して恐怖条件付け試験を行うことで、NP95の欠損が学習・記憶形成に与える影響について解析する。
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Research Products
(4 results)