2013 Fiscal Year Annual Research Report
斥力起源超伝導における波数空間フラストレーションとギャップ構造・転移温度との相関
Project/Area Number |
13J09605
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
鈴木 雄大 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超伝導 / 鉄系超伝導体 / 第一原理バンド計算 / スピン揺らぎ / バンド構造 / 高温超伝導 / 電子相関 / 多軌道系 |
Research Abstract |
本研究では、鉄系超伝導体を中心とした超伝導物質に対して、波数空間フラストレーションが超伝導に与える影響を調べた。採用初年度は鉄とヒ素で構築された、四面体構造における結合角の大きさによって、転移温度の水素置換依存性が変化することが知られている水素置換型鉄系超伝導体LnFeAsO_<1-x>H_x (Ln=La, Ce, Sm, Gd)と、窒化ホウ化物超伝導体LaNiBNに注目して研究を行った。またその内容を各種学会や論文で発表を行った。 (1) LnFeAsO_<1-x>H_xに対して、従来の理論では考慮していなかった元素置換の効果を正確に取り入れた第一原理バンド計算を行い、水素量毎に5軌道有効模型を構築して解析を行った。母物質近傍においては、従来の理解と同様にフェルミ面の重なり度合い、ネスティングが良いためにスピン揺らぎが発達し、超伝導が発現することを理解した。一方高ドープ域ではブロック層の電荷の変化によって、鉄の3d軌道とヒ素の4p軌道の混成が減ることで量子干渉が起こり、最近接鉄原子への電子の飛び移りが制限される、"Prioritized Diagonal Motion"と呼ばれる特異な電子状態になる事が理解された。この特異な電子状態によってスピン揺らぎが発達し、超伝導が発現することを理解した。また結合角によって二つのスピン揺らぎの重なりが変化することが、転移温度の水素量依存性と高い転移温度の起源であることを理解した。 (2) LaNiBNにおいても第一原理バンド計算から10軌道有効模型を構築しその物性を調べた。その結果、フェルミ面は多彩な軌道成分で構築されるが、その中の一つであるNiの3d_x^2-y^2軌道がスピン揺らぎを発達させうる事が分かった。またスピン揺らぎが発達する部分のみで超伝導が発達する、スピン揺らぎ機構による超伝導の可能性が有ることを理解した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
鉄系超伝導体の一つ、LnFeAsO_<1-x>H_x(Ln=La, Ce, Sm, Gd)に関する理論研究によって, 最近接鉄原子への飛び移りより第二近接の鉄原子への飛び移りが大きい電子状態が、高い転移温度の起源であると言う重要な見地を得た。この見地によって、より高い転移温度の物質開発に重要な一歩を達成したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を用いて鉄系超伝導体における更なる転移温度向上のための指針を研究する。最近接鉄原子への電子の飛び移りと第二近接への飛び移りの比率と転移温度の最適な関係を調べ、より高い転移温度の物質に関する指針を探索する。また、これと平行に個別の鉄系超伝導体における性質を調べ、波数空間フラストレーションの影響と、個別の性質についての理解を深める。
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