2013 Fiscal Year Annual Research Report
微小管切断酵素とタウ蛋白質の競合関係に着目した認知症治療薬の創薬基盤
Project/Area Number |
13J09612
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩谷 奈央子 名古屋大学, 大学院創薬科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | katanin / 微小管切断 / AAA ATPase |
Research Abstract |
本研究は、微小管切断酵素、katanin p60 (kp60)と微小管安定化因子、タウ蛋白質の競合関係を解明することにより、神経細胞死から認知症の発症メカニズムの理解と治療薬の創薬基盤を築くことを目的とした。本年度は、まず、kp60側の微小管作用機序を詳細に解析するために、研究実施計画に従った。 1. 他の微小管切断酵素やAAA ATPaseと比べ、kp60蛋白質試料の調製は非常に難しいことが言われており、活性の高い安定な試料の調製方法を確立することは重要である。研究代表者が、これまでに構築した大腸菌発現系システムは、それ自身十分有用なものである。しかし、それでも効率的な機能解析を進める上で、試料の収量、純度、安定性に疑問が残る。そこで、それらの改善を目指し、一つには、真核生物の無細胞系システムを試みた。kp60の発現を確認することができなかったものもあるが、順調に検討を進めている。一方で、より再現性の高いアッセイを行うために、高品質な微小管試料の大量調製に着手した。 2. 微小管側のkp60との結合領域を特定するために、微小管のC-tailに対する、kp60の結合・切断活性を超遠心実験により精査した。また、kp60の基質結合ドメインと微小管のC末端領域の組換え蛋白質のプルダウン実験を行ったが、結合の確定的な判定は難しかった。今後は、超遠心法やNMR法等を用いて解析する必要がある。 3. 高速AFMを用いて、kp60の微小管切断過程を観察したところ、微小管上でkp60オリゴマーが動的に振る舞い、切断後離れるといったおもしろい予備実験結果が得られた。これは、微小管切断酵素の動的運動をとらえる手法として期待が持てる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は微小管切断酵素の解析を中心に進め、研究の目的の達成に向かい着実に進展している。しかし、試料の不安定な性質に起因し、各実験系の高再現性を獲得することに時間がかかっている。その一方で、同じType I AAA ATPaseファミリーに属する、kp60とVps4の各基質結合ドメインのカルシウム結合部位の比較から、新たな知見が得られ、kp60のメカニズムに対する理解が深まった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、各実験系に適したkp60の調製方法の検討を継続する。また、今年度得られた結果の再現を目指し、各評価条件を検討する。それに加えて、1. kp60のリンカー領域の変異解析、2. kp60とタウ蛋白質の競合関係の解析、3. kp60阻害ペプチドの探索に着手する。タウ蛋白質は、Aβ蛋白質と同様に、その自己凝集体が神経変性疾患の原因に寄与することが示唆されている。Aβ蛋白質は、NMRを用いた構造生物学的解析が多く進められているため、それらの情報も効果的に利用する。
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Research Products
(4 results)