2014 Fiscal Year Annual Research Report
微小管切断酵素とタウ蛋白質の競合関係に着目した認知症治療薬の創薬基盤
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13J09612
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩谷 奈央子 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | katanin / 微小管切断 / AAA ATPase / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、微小管切断酵素であるkatanin p60 (kp60)と、微小管安定化因子であり神経変性疾患の原因蛋白質の一つ、タウの競合関係を解明することにより、神経細胞死から認知症の発症メカニズムの理解と治療薬の創薬基盤を築くことを目的とした。本年度は、kp60の微小管作用機序の詳細な解析を引き続き行うとともに、kp60とタウの相互作用解析を進めている。さらに、kp60の機能を抑制する阻害剤の探索研究から、新規のkp60結合ペプチドが得られた。 1. チューブリンC-tailペプチドの添加によるkp60の微小管切断活性の阻害実験を新たに行い、これまでの研究結果と併せて、kp60の微小管作用機序に関する仮説を支持する成果が得られた。一方、kp60全長体の調製方法の最適化については、カイコ-バキュロウイルス発現系システムの利用により活性型kp60の純度を向上させることに成功し、今後の機能解析の進展が期待できる。 2. kp60の微小管切断機能を阻害する新規化合物を探索するために、ファージディスプレイ法によりkp60 N末端ドメイン(NTD)に結合する候補ペプチドを同定した。アミノ酸配列の特徴から選定した候補ペプチドとkp60 NTDとの結合は、NMR化学シフト摂動法により確認した。同定した結合部位は、kp60 NTDのkp80 C末端結合領域と重複することがわかった。今後は、kp60 NTDとペプチド間の解離定数の定量的な評価を試みるとともに、ペプチドによるkp60の微小管切断機能の阻害について、試験管内および培養細胞を用いた検証実験を検討している。 3. タウの微小管結合領域のR1~R4ペプチドとkp60の相互作用実験に着手した。kp60の結合および微小管切断活性阻害に関わるタウの領域の特定、試験内での両者の競合現象の再構築を目指し、詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究実施計画の各項目に着手し、研究の目的の達成に向かい着実に進展している。kp60の微小管作用機序解明の鍵となる結果や試料の調製方法の改善を見出すことができた。さらに、新規のkp60結合ペプチドを同定する等の興味深い成果も得られた。しかし、試料の安定性や凝集性に関する問題点から、kp60とタウの競合実験については慎重な解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
kp60とタウの競合関係についてより詳細な解析を行う。また、本研究で得られたkp60結合ペプチドの研究は、微小管切断酵素の新規阻害剤の合理的設計の基盤となる可能性を有しており、今後の展開に期待ができるため、さらなる解析を進める。研究を遂行する上での問題点は、アッセイ中のタウの自己凝集化があり、他の神経変性疾患の原因蛋白質の情報も利用して凝集研究に着手し、研究遂行の助けとする。
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