2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09644
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小糸 祐介 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 水中機能ルイス酸触媒 / 糖変換反応 / 金属トリフラート / 遷移金属酸化物 / 31P NMR / LUMOエネルギー / FT-IR |
Research Abstract |
平成25年度は水中機能1)均一系触媒である金属トリフラートと2)不均-・系触媒である遷移金属酸化物をターゲットにしてNMRやIR等の分光手法により, 各触媒の活性支配要因について検討した. 金属トリフラートの系では, 新たなルイス酸触媒の評価法としてTMPOを用いた溶液NMR測定を提案した. TMPO水溶液に異なる6種類のカチオン種(Sc, In, Lu, Y, La, Zn)を有する金属トリフラートを添加すると, 糖の異性化反応やアリル化反応で高い活性を示すSc(OTf)_3やIn(OTf)_3において特異的に大きな<31>^P化学シフト変化と線幅の広幅化が観測された、この結果からSc(OTf)_3やIn(OTf)_3がカルボニル化合物と強い親和力を有していることが示された. またSc(OTf)_3, In(OTf)_3が他のトリフラート触媒に比べ低いLUMOエネルギーを持つことがDFT計算により証明され, 電子論的にもSc(OTf)_3とIn(OTf)_3がカルボニル基質と強い相互作用を持つことが証明された. 金属錯体の触媒能は触媒とカルボニル基質の相互作用の強さによって整理されることを新たに見出した. 一方, 遷移金属酸化物の解析では, 酸化物触媒が有する塩基性サイトが糖変換反応(ピルビン酸アルデヒドからの乳酸合成)の活性に及ぼす影響について考察した. 両性酸化物であるTiO_2やZrO_2触媒は酸性酸化物であるNb_2O_5やTa_2O_5触媒に比べ乳酸選択率が減少し, アルドール縮合物を主成分とする副生成物が多く得られる. アセトン吸着IR測定により各酸化物触媒の性質を評価するとTiO_2とZrO_2のみでアセトンのアルドール縮合物であるMSO (mesithyl oxide)のシグナルが検出された。これよりTio_2とZrO_2の持っ塩基サイトがピルビン酸アルデヒドのエノール化を促進し, アルドール縮合反応を誘発したと結論づけられた. これらの結果は, 今後のルイス酸触媒開発の設計指針として極めて重要な知見であり, 金属錯体触媒ではカチオン種の選定, 酸化物触媒では各酸化物の酸塩基特性が触媒活性に支配的に働くことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験については, 概ね計画通りに進行している. 特に金属トリフラートの研究については^<31>PNMR測定, DFT計算の結果と触媒活性の間に予想以上に良い相関性が確認された. 一方, 酸化物触媒の触媒活性の検討では, 従来あまり注目されることの少なかった酸化物の塩基特性と触媒活性の関係性を見出すことに成功した. しかし, 本題である遷移金属酸化物のルイス酸性質の検討については, 未だ十分な検討に至っていないため, 今後は固体NMR法等の手法を駆使し, 新たな評価手法を提案したいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究結果(金属トリフラートのルイス酸性評価)を踏まえ, TMPOプローブ分子を用いた遷移金属酸化物触媒の酸性質評価を実行する. 現時点までの検討で, この手法による遷移金属酸化物の評価は, ^<31>PNMRシグナルの広幅化によりシグナルの分離が困難であることが示された. この課題克服のために^<17>OラベルしたTMPOを使用し, 異なる視点から酸性質の評価が可能であるか, 検討を試みる. また, 金属トリフラートの検討で明らかとなったLUMOエネルギーとルイス酸性質の関係に着目し, 固体触媒においてもこの相関性が成立するのか, DFT計算で1)カチオンモデルから2)酸化物モデルへと計算モデルを拡張することで検討していきたいと考えている.
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