2014 Fiscal Year Annual Research Report
樹体内水・炭素利用プロセスに立脚した樹木成長の降雨応答機構の解明
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13J09663
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
吉村 謙一 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コナラ / アラカシ / ソヨゴ / 光合成 / 呼吸 / 自動チャンバー |
Outline of Annual Research Achievements |
京都府南部の山城試験地において、長期の毎木調査の結果をまとめたところ、試験地を優占する落葉樹種であるコナラの現存量は増加していたが、試験地を優占する常緑樹種であるソヨゴの現存量はあまり増加していなかった。樹木生長の樹種差を引き起こすメカニズムを解明するために葉光合成および幹呼吸を自動で連続観測できる測器を開発してそれぞれの速度を測定した。その結果、暑い夏には常緑樹であるソヨゴの光合成速度は低下し、コナラの光合成速度の低下はあまりみられなかった。各樹種の光合成速度には温度依存性がみられ、コナラでは気温30℃のときに光合成速度が最大になる一方、ソヨゴでは気温25℃のときに光合成速度は最大になり、盛夏で気温が40℃近いときにはソヨゴではほとんど光合成はみられなかった。 また、コナラとソヨゴのほかにアラカシにおいても同様の観測を開始した。アラカシは現存量としては多くないものの、近年の成長率が高く将来の植生遷移後に優占する可能性のある樹種である。アラカシにおける夏の光合成速度はコナラと同程度であり、夏の暑さに対して強いことが明らかになった。また、アラカシは常緑性であるために冬も光合成しており、そのため年間通した光合成量はコナラを上回ることが計算により求められた。一方で、アラカシにおける冬の光合成速度はソヨゴと比べると低いため、アラカシはソヨゴよりも低温耐性が低く、逆に夏の高温耐性が高いため、アラカシとソヨゴの分布域は気温によって表現されうることが生理的性質から明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コナラとソヨゴに加えてアラカシにおいて光合成・幹呼吸の自動連続測定を行なっている。また、今春の展葉期の測定から展葉時の芽の呼吸速度が常緑樹において落葉樹と比べると大きいことが明らかになり、フェノロジーと個体炭素収支の関係における新たなパラダイムを構築することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2年続けて雨の多い年であったため、当初目標にしていた樹木成長に対する乾燥影響の評価は現在のところできていない。これからは樹木成長の連続観測とともに、年輪解析を用いた過去の樹木成長と気候の関係から乾燥影響評価をおこなっていきたい。
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