2014 Fiscal Year Annual Research Report
J. S. バッハの最初期の受容史研究--音楽理論と《四声コラール曲集》出版から
Project/Area Number |
13J09705
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 薫 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | J. S. バッハ / 対位法 / 数学的音楽観 / 感性 / 趣味 / ハイニヒェン / マッテゾン / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は18世紀の音楽理論、音楽批評における対位法の位置づけを個別の事例に則して検討した。 年度の前半はハイニヒェンの『作曲における通奏低音』を、これに先立って出版された『通奏低音の完全な習得のための手引き』と比較しつつ読解する作業を行った。特に序文中で理性と感性(聴覚)という対比の中で行われる対位法批判が同時代のマッテゾンの音楽批評と相互関連性を持つことに着目し、その思想的背景を論じた。また、ハイニヒェンが参照しているガスパリーニ、サン=ランベールの通奏低音理論書における趣味概念とハイニヒェンにおける趣味概念の比較を行った。これらの成果の一部については日本18世紀学会第36回大会で口頭発表を行った。 年度の後半にはマッテゾンの『完全なる楽長』における旋律論が著作中で果たしている役割を検討した。旋律論はしばしば音楽理論の過渡期に特徴的なものとして位置づけられるが、『新設のオーケストラ』における対位法理論記述やボーケマイヤーとのカノン論争の経緯をたどることによって、彼の旋律論が数学的音楽観批判と対位法理論記述を調停するものであったことを明らかにした。この内容は論文にまとめ『美学』(美学会編)に投稿し、査読を通過して現在校正中である。 上記の二つの研究と並行して、マールプルクの『フーガ論』をはじめとする音楽批評、理論書等、18世紀後半にまで検討の範囲を広げ、今後の研究の基礎となる資料の収集や先行研究の渉猟に取り組んだ。この内容は来年度行われる2つの国際学会において口頭発表する予定であり、すでに審査を通過している。また個別の事例について読解を進める中で、18世紀の音楽を取り巻く言説におけるフーガ、対位法とJ. S. バッハとの関わりについて来年度どのように研究を進めるか、方向性を定めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って18世紀前半の音楽理論書、音楽批評の読解を進め、学会での口頭発表、論文の投稿を行うことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
二つの国際学会での口頭発表のための準備を継続し、発表を終え次第、論文の形にまとめる。当初の計画の中でまだ扱っていない18世紀後半の事例については一次資料、二次文献の収集を行う。
|
Research Products
(4 results)