2013 Fiscal Year Annual Research Report
一分子計測による回転分子モーターF型ATP合成酵素の回転機構の解析
Project/Area Number |
13J09730
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
曽我 直樹 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ATP合成酵素 / トランスポーター / マイクロデバイス / 能動輸送 / 受動輸送 / 一分子計測 |
Research Abstract |
ATP合成酵素F_0F_1は生体膜を介したH^+の輸送と回転運動を共役させる分子モーターである。本研究はその回転運動とH^+輸送の共役機構の解明を目的とする。この共役機構を解明するために、回転運動とH^+輸送の同時観察を行う事が有用な手段だと考えられる。しかし、これまでに回転運動を可視化する実験系は多数開発されてきたのに対し、F_0F_1を含むイオン輸送速度が極めて遅いトランスポーター蛋白質一分子によるイオン輸送の観察は技術的に困難とされ、なされてこなかった。そこでまず、F_0F_1一分子のH^+輸送活性測定系の開発を行った。微小加工技術を用いて、ガラス上に体積が数fL (f=~4μm, h=~0.5μm)の微小チャンバーをアレイ化したマイクロデバイスを作製した。このマイクロデバイス上に3種(水溶液、脂質を溶かした有機溶媒、水溶液)を順々に流し込む事で、微小チャンバーの開口部に脂質二重膜を展開し、脂質二重膜で覆われた微小チャンバー(ALBiC)を形成した。また、ALBiCの形成効率は~99%と非常に高効率であった。pHに応答する蛍光色素をALBiC内へ封入し、F_0F_1を再構成したリポソームと形成したALBiCの脂質二重膜の膜融合を利用してF_0F_1をALBiCへ再構成させた。F_0F_1の再構成後、ATP添加によりH^+輸送を行わせた。反応開始から数千秒後に、幾つかのチャンバーからpHの減少示す明確なシグナルが見られた。また、pH減少速度のヒストグラムを描いたところ、ピークが等間隔に並ぶ事がわかった。これらのピークは再構成されたF_0F_1の分子数を反映していると考えられることから、初めてトランスポーター蛋白質一分子によるイオン輸送活性の定量計測を行えたと結論づけた。 また、上述のALBiCには測定時間が極めて長い事から回転運動との同時観察が難しいと考えられる。そこで、ALBiCの改良を行い、体積を数fLから数百aLまで減少させ、測定時間が、10倍以上短縮する事が予想された。実際に、a-hemolysinを用いた受動輸送活性を測定したところ、体積に応じて受動輸送活性が速くなる事がわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初掲げた目標は既に達成しており、実験は計画以上に早めに進行している。また、目的を達成する為に行ったアプローチ法が様々な実験に応用できる事から、主目的以外の実験により成果をあげる事が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画通りに研究を進めていく。具体的には、開発したALBiC上で再現性よく回転運動の可視化ができる条件をまず模索する。その後、積極的に同時観察を行っていく予定である。また、H^+輸送と回転運動の同時観察が成された後、ATP合成酵素のATP合成反応をも同時に可視化していくなどして回転運動機構の解明を行っていく。
|
Research Products
(2 results)