2013 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質形成を制御するDNAメチル化酵素DNMT1の新規作用機序の解明
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13J09870
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
野口 浩史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経幹細胞 / エピジェネティクス / DNAメチル化酵素 / 大脳皮質形成 |
Research Abstract |
これまでの成果から、大脳皮質形成過程において維持型DNAメチル化酵素DNMT1が胎生後期神経幹細胞のニューロン分化を抑制し、未分化性の維持に重要な役割を担っていることが得られている。そこで本年度は、DNMT1がどのようにしてニューロン分化を抑制するのか、その分子メカニズム解明に必要となる2つの網羅的解析を行った。 1、DNMT1の標的遺伝子の探索 胎生後期神経幹細胞においてDNMT1によって発現が制御されている遺伝子を明らかにするために、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行った。胎生中期及び胎生後期神経幹細胞にDNMT1のノックダウンを誘導し、これにより発現が著しく変化する遺伝子の探索を行った。その結果、胎生中期神経幹細胞においてDNMT1は、胎生後期に発現が開始する遺伝子の発現を抑制しており、一方、胎生後期神経幹細胞では、ニューロン産生期である胎生中期において発現が観察される遺伝子の発現を抑制していることが明らかになった。これは、DNMT1が各胎生期で異なる遺伝子の発現を調節していることを示しており、胎生中期に高発現するニューロン分化誘導因子の発現調節を介してDNMT1は胎生後期神経幹細胞のニューロン分化を調節していると考えられる。 2、DNMT1の相互作用因子の探索 DNMT1のDNAメチル化非依存的な作用は、他の転写因子や、転写抑制因子との相互作用によってもたらされる。そこで、質量分析装置を用いて胎生後期神経幹細胞におけるDNMT1の相互作用因子の同定を試みた。その結果、ニューロン分化抑制作用を有する転写抑制因子REST (NRSF)や、Sall1を含む122個のタンパク質が同定された。DNMT1はこれらの因子と複合体を形成することにより、胎生後期神経幹細胞のニューロン分化を抑制していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、マイクロアレイによる遺伝子発現解析及び、質量分析装置を用いたDNMT1の相互作用因子の探索を計画していた。研究実施計画の予定通り、2つの網羅的解析を実行でき、また次の解析に進める十分な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究実施計画に従い、DNMT1どのような分子メカニズムで胎生後期神経幹細胞のニューロン分化を抑制しているのかを明らかにしていく。昨年度より、DNMT1により発現が制御されている遺伝子、及びDNMT1と相互作用している遺伝子が同定できた。本年度は、クロマチン免疫沈降法によりDNMT1の標的遺伝子の同定とともに、DNMT1と協調して標的遺伝子の発現を制御する相互作用歯子の同定を目指す。
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