2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J09997
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
大橋 勢樹 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 重力崩壊 / 特異点 / 安定性 / スカラー場 / 一般的な重力理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、物質が自己重力で崩壊をした結果どのような時空が実現され、またその時空の性質を明らかにすることである。本年度の研究テーマは主に以下の2つある。 ①裸の特異点形成の安定性解析 : 重力崩壊の結果生じる時空としては主に、ブラックホール時空と裸の特異点を持つ時空の2つが考えられる。特異点とは時空の曲率が無限大に発散し、重力理論の困難が生じるところである。時空が高い対称性を持つ場合は、広い初期条件の下で裸の特異点が生じてしまうことが知られているが、対称性が低い場合に、特異点が安定に形成されるかに関してあまり知られていなかった。そこで本研究では、時空が球対称で自己相似的な、裸の特異点が生じる重力崩壊時空に摂動を加え、特異点が安定に形成されるかを調べた。結果として、特異点は安定に形成されることを明らかにした。さらにこの結果は時空の次元によらない、一般的な性質であることも明らかにした。 ②一般的な重力理論の構築 : 現在宇宙は、その初期にインフレーション期と呼ばれる指数関数的な膨張期を経験したと考えられている。現在までに様々なインフレーション機構が提唱・研究されてきた。近年、運動方程式が二階になる最も一般的な単一スカラー場の重力理論が、インフレーション理論を統一的に記述する理論として盛んに研究されている。また、この理論の枠組みの中でのブラックホール解の研究もすすんできている。そこで、本研究ではインフレーション理論やブラックホール解への応用を念頭に、さらに広い枠組みである、運動方程式が二階になる最も一般的な複数スカラー場を持つ重力理論の構築を試みた。結果として、最も一般的な2のスカラー場を持つ重力理論の運動方程式の導出に成功した。また、まだ未完成ではあるが部分的に系を記述するラグランジアンの構成にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特異点の形成の安定性に関しては、次元によらず安定という結果をだした。また、スカラー場を含む最も一般的な重力理論に関しては、ラグランジアンに関しては現在模索中であるが、運動方程式までは導出を完了している。このように着実に結果がでてきている点から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最も一般的なスカラー場を含む重力理論を完成させることと、その理論に含まれるブラックホール解等の理論の性質の精査をすることを目標とする。それと同時に、現在盛んに議論されている負の宇宙項を持つ時空でのブラックホールの性質、特に熱力学的性質と時空の不安定性などの動的性質との関係性に着目して研究を進めていく。
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Research Products
(3 results)