2013 Fiscal Year Annual Research Report
静的および動的な超高精度多成分第一原理手法の開発と電子・陽電子ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
13J10009
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
小山田 隆行 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 陽電子化合物 / 多成分系子軌道法 / 第一原理計算 / 電子・陽電子相関 / 電子・陽電子密度 / 陽電子親和力 |
Research Abstract |
1年度は主にLiH分子への陽電子吸着機構を研究し、ビリアル定理に則した陽電子親和力(PA)の評価方法として重要な断熱PAとの比較とともに、LiHの垂直PAを正しく定義し、LiHの陽電子化合物中の主要成分は核間距離に依存して異なることを解明した。これは、研究目的にある分子への陽電子束縛機構や電子―陽電子対消滅機構を理論的立場から解明する上で重要な基礎事項である。また、陽電子対消滅法を用いた医療診断技術や材料物性探査の測定精度の向上に繋がる有益な基盤情報となることも期待され、陽電子科学の進展において大きな意義を持つ。この研究成果は、国内外の最先端の陽電子科学研究者が集う国際会議POSMOL2013(金沢7月)にて発表を行い、研究代表者・小山田が第一著者として執筆した論文は、専門誌European Physical Journal/Dに受理掲載が決定し現在、印刷中である。本年度は、理論化学討論会(福岡5月)と分子科学討論会(京都9月)でもポスター発表を行い、計算材料科学の国際会議(仙台11月)では最優秀ポスター発表者賞を受賞した。さらに本研究は開発中のMC_MOプログラムに電荷密度評価ルーチンを実装し、無極性分子CS2とCSe2の比較からCSe2の平衡核配置では、陽電子がどのように分布し吸着しているのかを解明した。この電荷密度解析の結果は高く評価され、2013年のPhysical Chemistry Chemical Physics 15巻に掲載された。また、Obara―Saika法による分子積分評価を電子―陽電子系へ拡張し、MC_MOプログラムに実装することも実現している。この他、親分子の振動波動関数ではなく、陽電子化合物の振動波動関数を用いた新しい振動平均陽電子親和力の評価方法の開発など、本研究計画以上の大きな進展も得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年度はLiH, cs_2, CSe_2への陽電子吸着に関し、実験的に観測が困難な電子と陽電子の密度分布やエネルギー成分を評価・解析した。LiHの陽電子化合物中の主要成分は核間距離に依存して異なることを解明した。これは研究目的の電子・陽電子状態と陽電子結合機構の解明に繋がる有益な基盤情報である。またCSe_2では小さいが正. の陽電子親和力(PA)を得た。Obara-Saika法による分子積分評価も実現し、1年度の研究計画はほぼ達成された。さらに研究計画にはない陽電子化合物の振動波動関数を用いた振動平均PA評価等、計画以上の進展が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
最近の実験からは無極性分子CS_2への弱い陽電子吸着が報告されているが、本研究の配置間相互作用(CI)計算からは平衡核配置では正の陽電子親和力(PA)は得られていない。本研究グループのCI計算による振動効果を考慮した解析では、CS_2でも正の振動平均PAが得られたが、実験値75meVと比べ大幅に過小評価している。CI計算のPAを定量的に改善する方策として、本研究で考案した陽電子化合物の振動波動関数を用いた新しい振動平均PAの評価方法が有望である。また振動効果を考慮した時のCS_2への陽電子吸着機構は未解明であり、これを解明する方策として振動効果を考慮した密度解析法を確立する。
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