2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒッグスセクターの理論的研究と加速器実験による次世代ラグランジアンの決定
Project/Area Number |
13J10031
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
菊地 真吏子 富山大学, 理工学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒッグスセクター / 拡張ヒッグス模型 / 加速器実験 / ヒッグス結合定数 / 量子補正 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、ソフトに破れたZ2対称性をもち二重項ヒッグス場が二つある模型に着目し、将来のヒッグス結合定数の精密測定を用いて模型の検証・同定をおこなえるかを研究した。この模型では、湯川相互作用が異なる4つのタイプが存在する。本研究では、hVV(V=W, Z)、hff(f=t, b, τ)、hhh結合をオンシェルくりこみ法を用いて1ループレベルで計算し、hVV結合が1%以上ずれた場合は、hbb結合とhττ合による模型の識別が1ループレベルでも可能であることを示した。また、将来の高輝度LHCやILCでヒッグス結合定数が精密に測定されたときに様々な結合定数の測定データを用いて内部パラメーターを抜き出すシミュレーション解析を行い、模型のパラメーターを精度よく抽出できることを示した。論文はNucl. Phys. Bに掲載された。 また、交付申請書の「研究実施計画」に記載したヒッグス結合定数の輻射補正の研究の他にも、拡張ヒッグス模型に現われる付加的ヒッグスボソンの加速器実験直接探索の研究も実施した。LHC Run-I(√s=7TeV)の同電荷対レプトンのイベント数データを用いて、ヒッグス3重項模型(標準理論のヒッグス場に3重項表現のヒッグス場が1つ加わった模型)に現れる複荷電ヒッグス場(H++)の質量に対し新たな制限を与える研究を行った。同電荷対Wボソンに崩壊するシナリオについて、H++が生成され同電荷対レプトンに崩壊するFiducial断面積についてQCDの高次補正の寄与も含めて計算し、下限値(60-68GeV以上)を与えた。論文にまとめ、Phys. Rev. Dに掲載された。さらにLHC√s=8TeVによる最新の同電荷レプトンのイベント数データを用いて電荷Wボソンに崩壊するシナリオで下限値をつける解析を行い、新たな制限(90GeV以上)を与えた。論文はPTEPへの掲載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
拡張ヒッグス模型においてのヒッグスボソン結合定数の量子補正を含めた精密計算の研究は、当初の計画の通りD+D模型について解析が進み、フル論文をまとめた。それに加えて、LHC実験における複荷電ヒッグスボソンの直接探索の研究も実施し、2つの論文にまとめた。さらに、イナート二重項模型のヒッグス結合定数の量子補正の研究にも着手し、現在論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
既に着手しているイナート二重項模型におけるヒッグス結合定数の量子補正の研究を完成させる。イナート二重項模型に含まれる最も軽い中性の付加的ヒッグスボソンは暗黒物質の候補になり得て、イナート二重項模型の暗黒物質シナリオを将来のヒッグス結合精密測定を用いて検証できるか明らかにし、論文にまとめる。 次いで、ヒッグス1重項模型の量子補正を含めたヒッグス結合定数の研究に着手する。オンシェルくりこみ処方を構築し、様々なヒッグス結合定数を1ループレベルで評価し、標準理論の予言値とのずれのパターンで他の模型と識別できるか研究し、論文にまとめる。 これまで研究してきたヒッグス結合1ループ計算の数値計算プログラムをパッケージ化し、公開する準備をする。
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