2014 Fiscal Year Annual Research Report
労働力の異質性を導入したセグリゲーションのパターン分析
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13J10130
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 万理子 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エスニシティ / セグリゲーション / 異言語グループ / 国内言語距離指標 / 国際言語距離指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.前年度までに得られていた分析(一都市内におけるエスニシティの差異に応じたセグリゲーション(居住の住み分け)の発生メカニズムを、経済学理論の観点から示した。また、均衡での居住パターンが、現実と適合的である。)の頑健性を示した。 2.前年度までに得られていた結果(二地域間におけるエスニシティ・言語の違いによって、地域的セグリゲーションが生じることを解析的に分析し、均衡で達成される居住分布と現実の分布との適合性が高いことを示した。また、社会的に最適な居住パターンと均衡上のパターンとの一致・不一致についても議論した。)に加え、それらの頑健性を吟味した。 3.多様なエスニシティが存在する社会(国)、特に多様な使用言語のグループが存在する社会における、異言語間のコミュニケーションに纏わるコストに焦点をあてた実証分析を行った。まず、国内での異言語グループ間コミュニケーションに要するコスト(国内言語距離)と国際的に異言語グループ間コミュニケーションをするためのコスト(国際言語距離)の指標を、言語学的観点から分類された語族に応じて定量化し、それらの指標が一人あたりGDPに与える影響を分析した。全体としては、国内言語距離は一人あたりGDPに対して負の影響を与えることがわかった。一人あたりGDPが高水準の国々については、国際言語距離指標の値が小さい(国際間のコミュニケーションが容易、ないしは英語を習得しやすい言語を使用している人口比率が高い)ほど、経済水準と正の相関があることがわかった。他方、一人あたりGDPが低水準な国々については、国内言語距離指数が小さい(国内で使用されている公用語の習得が容易である)ほど、経済水準に対する負の影響が強いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、エスニシティ・言語グループによるセグリゲーションの発生メカニズムを理論上は示すことができ、また現実の事例とも対応付けられたため。また、経済理論の観点からのみならず、実証分析によっても、多様な言語グループが存在する場合に経済活動にどのような影響があるかに関する分析を行えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に主に行った実証分析(国内言語距離ならびに国際言語距離指標と一人当たりGDP水準との関係に関する実証分析)では、比較的平易な推定手法を用いたため、推定結果にバイアスがかかっている可能性がある。そこで、より正確な実証分析結果を得るために、空間計量経済学の手法を用いることを検討している。具体的には、地理的分布に関係する除外変数の問題に対応するため、Spatial Durbin Modelによって得られた推定結果を利用して計算された(Average) Total Direct/Indirect Effectの考察等を行う予定である。さらに、言語距離指標と国際貿易との関係に着目した実証分析を行うことも検討している。
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