2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J10238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
綱川 歩美 東京大学, 史料編纂所, 特別研究(PD)
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Keywords | 日本史 / 思想形成 / 書物史料 / 闇斎学 / 垂加神道 / 藩儒 / 社倉法 / デジタル画像 |
Research Abstract |
1)初年度に当たる本年は、まず研究の材料となる史料収集を重点的に行った。 主な調査先は①宮崎県高鍋町立図書館・宮城県立図書館・宮崎文書センター②高知県立図書館・土佐山内宝物資料館③筑波大学附属中央図書館④宮城県立図書館⑤公益財団法人無窮会図書館である。 ①では日向国高鍋藩の明倫堂と関連する儒者・藩士の史料を中心に採訪した。②では土佐藩儒・谷秦山および垣守・真潮等の藩儒家の著作や関連史料を調査した。③では「闇斎学」のうち垂加神道関連の史料を中心に調査した。④では伊達文庫に所蔵される稲葉迂斎関連の講義録を採取。⑤では高鍋藩儒千手廉斎の手記である『自求録』の異本を発掘した。 2)デジタルカメラで撮影したデータ(. jpeg)は書名と機関ごとに分類してデータサーバに格納した。データの管理は既製のソフト(ACCESS)によって行い、採訪史料の書誌情報を統一し、内容の分類を設けて登録した。その情報を簡易な検索フォームを準備した。 3)史料調査の結果から、とりわけ高鍋藩についての研究を進め、藩校明倫堂と藩儒千手廉斎の思想形成について分析をおこなった。⑤の調査で発掘した『自求録』をもとに、廉斎の藩政の救荒政策に関わる社倉法の思想と実践を考察し、藩校教育における人材論を抽出した。この成果を「第87回書物・出版と社会変容」研究会で報告(タイトル ; 一八世紀の社倉法と政治意識-高鍋藩儒・千手廉斎の思想)した。なお、⑤の無窮会図書館蔵の『自求録』は管見の限り、千手廉斎に関する史料としては初出である。 4)今年度の②の調査で得た史料をもとに、「闇斎学」の受容と出版の関係性についての論文(「闇斎学」の享受者たち)を執筆。「研究実施計画」における(c)「闇斎学」と書物の関連についての論考で、来年度以降、共著論集の一部として発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の史料調査に関しては、当初予定していた場所をおおむね調査することができた。ただし、調査対象のうち、日程の調整がうまくいかなかったために小浜市立図書館への調査ができなかった。 また、研究を円滑かつ合理的に進める上で、大量の史料データを管理するための仕組みの基礎部分を構築することができたからである。今後、データ管理・整理については随時改良を加えていくつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
史料調査の成果をもとに研究をすすめ、口頭報告および論文発表を積極的に行っていくつもりである。初年度に着手した高鍋藩校と藩儒の思想形成に加えて、小浜藩・土佐藩の分析を進め、比較事例として対象化したい。追加で生じる調査については、なるべく年度初めに大まかな日程を組んでおき、日程交渉をスムーズに進めたい。 調査・撮影した画像史料のデータについては、利用の便を考え、随時改良を加えていく。とくに、「研究実施計画」における(c)「闇斎学」と書物の関連に関わる事項として、「闇斎学」の特徴的な講義録の類いを整理するための方法として積極的に活用したいと考えている。
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Research Products
(2 results)