2013 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界溶体急速膨張法による有機薄膜創製技術の汎用性強化と薄膜自由設計手法の開発
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13J10242
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤井 竜也 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / 超臨界溶体急速膨張法 / 有機半導体薄膜 |
Research Abstract |
1)超臨界二酸化炭素に対するテトラセンの溶解度測定 分光学的手法を利用した飽和溶解圧力探索法によって超臨界二酸化炭素に対するテトラセンの溶解度を, 測定した. これにより, 今後の製膜実験において, 結晶化現象の推進力となる溶解度差を正確に把握することができるようになり, 現象論的見地からの考察が可能になったと考えられる. さらに状態方程式を駆使して溶解度の推算を行い, ペンタセンが超臨界二酸化炭素にほとんど溶解しない可能性が高いことを明らかにした. (2)ペンタセン薄膜の創製実験 超臨界溶体急速膨張法による有機半導体作製技術の汎用性の強化を目的としてペンタセン薄膜の製膜に取り組んだ. アントラセン薄膜の製膜で蓄積した知見を活用し, 最適と思われる実験条件で製膜を試みたが, ペンタセン薄膜を創製することができなかった. これはペンタセンの超臨界二酸化炭素に対する溶解性が低いことが原因であると考えられる. そこで, 溶体濃度を大きくするために溶質溶解セル内をスターラーで撹拌し, ペンタセンの溶解度が大きくなる高温高圧の条件で3時間以上にわたる製膜実験を行ったが, 吸光光度計によってペンタセン由来の光吸収を観察することができず, ペンタセン薄膜の作製もできなかった. したがって, 以前にペンタセン薄膜として報告されていたものは含有する不純物によるものである可能性が高いと考えられる. (2)テトラセン薄膜の創製実験 最適と思われる案験条件において製膜実験を行い, テトラセン薄膜の創製に成功した. 得られたテトラセン薄膜が大きく鋭いXRDピークをもつことから, 高い結晶性を有していることが示唆され, 高いキャリア移動度を示すことが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最終年度までに達成する計画の]0項目のうち, ペンタセン薄膜に関する5項目の達成が困難であることが明らかとなり, テトラセン薄膜に関する2項目のみを成し遂げた. したがって、達成度は全体の20%であり, 研究計画の半分を見直す必要も出てきたため, 「遅れている」と判断した. これは, 既往の研究で作製可能だと示されていたペンタセン薄膜の創製が, 実際は不可能であったためたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
テトラセン薄膜に対しては予定通り, 導電特性と操作条件との相関性を明らかにしていく. ペンタセン薄膜に関する検討は, 本法によるペンタセン薄膜の製膜が不可能であったことから, 計画を変更する必要がある. そこで, 高キャリア移動度を有すると報告されている種々の低分子有機半導体材料を用いて, 超臨界二酸化炭素に対する溶解度測定を実施する。そして, テトラセンと同等以上の溶解度を有する有機半導体材料を選定し, 本法を胴いて薄膜創製実験を行う. さらに, 導電特性と操作条件との相関性を明らかにする. そして, 得られた知見を統合し, さまざまな目的物質・基板に対して所望の薄膜が得られるような薄膜の自由設計の手法を提案する.
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