2013 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌が引き起こす昆虫の性特異的致死現象の機構解明
Project/Area Number |
13J10329
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
杉本 貴史 富山大学, 先端ライフサイエンス拠点, 特別研究員
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Keywords | ボルバキア / オス殺し / 生殖操作 / 遺伝的オスのメス化 / アズキノメイガ / 遺伝子量補償 / 共生細菌 |
Research Abstract |
当初の研究計画に従って、鱗翅目におけるZ染色体座乗遺伝子の解析を進め、過去には遺伝子量補償の機構が存在しないと考えられていた鱗翅目昆虫においても、カイコガ、アズキノメイガの両方で遺伝子量補償の機構が存在し、その機構が、メス側でZ染色体座乗遺伝子の発現量を倍加する働きによるものであるということがわかった。また、ボルバキア感染アズキノメイガにおいては、もともと遺伝子量補償が必要の無いオスで、遺伝子量の倍加が起こっており、結果的にZ染色体座乗遺伝子の発現異常が引き起こされていることがわかった。この成果は、鱗翅目昆虫において遺伝子量補償が存在することを示す有力な証拠となるのみならず、その遺伝子量補償が共生細菌によるオス殺しの原因となっている可能性を示す、画期的な発見と言える。 当初、研究計画にあったOsdsxの上流遺伝子の解析については、他の研究機関で類似の研究が行われている事がわかった事から、実施を見送った。 また、次年度に予定されている、RNA-seqを用いた網羅的解析を進めるにあたって、ボルバキア側のゲノム情報が重要になってくるとの見地から、ボルバキア全ゲノム解読への利用を想定した、アズキノメイガ感染ボルバキアのカイコガ培養細胞への移植実験を行った。現在、Bm-aff3細胞にて感染維持に成功している。 また、新規に発見されたボルバキアによらないオス殺し系統における現象の解析を進め、このオス殺し系統が、どの共生細菌にも感染していないにもかかわらず、ボルバキアと同様に、遺伝的オスのメス化を誘導する能力を持つ事を示した。これは、遺伝的オスのメス化を伴うオス殺し現象が、共生細菌以外のオス殺し因子によっても引き起こされていることを示した初めての発見で、広範囲のオス殺し現象が類似の機構を経て引き起こされている可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部で、当初の研究計画に変更が生じた部分もあったが、培養細胞における感染系の確立したこと、新規オス殺し系統における現象解析が順調に進んだことから、残りの研究計画を滞りなく遂行し、最終的な目的である機構解明に向けた取り組みが順調に行われていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題の推進については、新規にボルバキア全ゲノム解読を行うという方針を採った事から、一部に変更が生じている。原因因子候補のスクリーニングには、次世代シーケンサ解析によるボルバキア全ゲノム解読と、RNA-seqによる宿主側、細菌側それぞれの遺伝子の網羅的解析、それに加えて、small RNAの解析の3つを解析の主体とする。機能解析については、大規模解析で得られた情報を元に、アズキノメイガへの遺伝子導入やRNAiによる解析を主な解析法として用いて行く予定である。
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Research Products
(1 results)