2014 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌が引き起こす昆虫の性特異的致死現象の機構解明
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13J10329
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
杉本 貴史 富山大学, 先端ライフサイエンス拠点, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ボルバキア / オス殺し / 生殖操作 / アズキノメイガ / 細胞内共生 / 遺伝子量補償 / 性決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
アズキノメイガ感染ボルバキアは、性決定機構への干渉を通じて生殖操作を行っていることが有力視されているため、宿主側の性決定機構の解明は重要な課題である。2014年にカイコガの性決定遺伝子が明らかにされたことを受けて、オス性決定遺伝子mascにターゲットを絞って解析を進めた。その結果、アズキノメイガにおいてmasc遺伝子の完全長配列を決定した。今後、当該遺伝子がアズキノメイガの性決定に関与しているか否かの検証を進める。 宿主と細菌の相互作用を明らかにするには、遺伝子機能解析が可能な実験系の構築が必須である。そこで、アズキノメイガ感染ボルバキアのカイコガ培養細胞への移植を行った。カイコガ培養細胞への移植には成功したが、オス由来の細胞に移植した際に、性決定遺伝子や培養細胞の変化は観察されなかった。これは、キチョウ感染ボルバキアとは異なった性質である(陰山、私信)。また、アズキノメイガの生体を用いた遺伝子機能解析系も重要であると考え、電気搾孔法による遺伝子導入の系を確立し、成果を英文誌Applied Entomology and Zoologyに発表した。また、ボルバキアの人工的な感染操作技術として期待される、高温短時間処理による新規ボルバキア除去法を確立し、英文誌Journal of Insect Physiologyに発表した。 ボルバキア感染カイコガ培養細胞を用いて、ゲノム解読を行い、ボルバキアゲノムをほぼ網羅していると考えられる1.24Mbpの配列を入手した。得られたゲノムは双利共生型に比べて、トランスポゾン配列が多く、他の生殖操作型ボルバキアと類似の特徴を示す傾向があった。 ボルバキア感染によるオス殺し、また、感染母系からボルバキア除去した際に生じるメス特異的致死の両方に、性染色体座乗遺伝子発現の異常が関与していることを確認した。本成果については、現在、論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アズキノメイガ感染ボルバキアによる宿主の生殖操作に、性染色体座乗遺伝子の発現調節機構異常が関与していることを裏付ける等、研究は順調に進展した。また、ボルバキアゲノム配列を決定し、宿主側でも生殖操作によって影響を受ける最上流の因子と期待されるmasc遺伝子のホモログを単離した。また、in vivo, in vitro両面から遺伝子機能解析を可能にする実験系の構築にも注力し、成果をあげている。以上のように、最終年度における飛躍に向けて、宿主―細菌間相互作用解明に向けたバックグランドが整いつつある。 成果報告にも注力し、査読付き投稿論文2報(英文)、国際学会発表1件、国内学会発表2件の発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
アズキノメイガの胚を用いた遺伝子機能解析や、ボルバキアとランスフェクション系を早急に確立する。 同時に、RNA-seqによる発現解析を進め、ボルバキア感染によって異常が生じる宿主側因子を網羅的に解析し、ボルバキアゲノム配列と照らし合わせながら、相互作用する因子の候補を絞り込む。絞り込んだ因子について、カイコガ培養細胞およびアズキノメイガ生体を用いて、機能解析を行い、生殖操作の原因遺伝子や関連遺伝子を決定する。 また、配列決定したmasc遺伝子が、アズキノメイガにおいてオス化決定遺伝子として機能しているか否かの確認を早急に進める。さらに、masc遺伝子と相互作用する因子をボルバキアゲノムから探索し、機能解析を進める。
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Research Products
(4 results)