2014 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカの学区におけるシティズンシップ教育のカリキュラムマネジメント
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13J10375
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古田 雄一 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シティズンシップ教育 / アメリカ / 貧困地域 / 地方教育学区 / パブリック・アチーブメント / カリキュラムマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アメリカの中でも特に貧困層や人種・民族的マイノリティの多く住む、都市部を中心とした貧困地域(の学区)に焦点を当てて研究を行った。アカウンタビリティに基づく教育改革が進行する中で、貧困地域の低学力の学校では基礎学力保障に重点が置かれ、シティズンシップ教育の機会は不十分となりやすい。これに、後述する種々の環境的要因が重なることで、彼らは民主主義への参加から疎外されやすくなっている。そうした地域における市民性形成をめぐる課題を明らかにするとともに【=後述1】、当該地域の学校がシティズンシップ教育の実践を通して、いかにそうした課題を克服しうるのか、事例を通して考察した【=後述2】。 1 貧困地域の子どもを取り巻く市民性形成をめぐる環境的要因の分析 貧困地域では、家庭・地域における市民的学習の種々の機会格差、また学校におけるシティズンシップ教育の機会格差が重なり、民主主義社会に参加する知識・技能・意欲が育まれにくくなっていることを、文献検討を通して明らかにした。加えて、彼らを取り巻く社会的文脈や日常的経験、また学校の隠れたカリキュラムが、自身の参加を通じた現状の変革に対する無力感を植え付けていることを明らかにした。 2 貧困地域で導入されるシティズンシップ教育実践「パブリック・アチーブメント」の事例研究を通したその意義と可能性の考察 貧困地域ではシティズンシップ教育の優先順位が低くなりやすい中で、敢えて貧困地域でも展開されるシティズンシップ教育の実践である「パブリック・アチーブメント」に注目し、その導入事例の分析を通して、こうした実践の意義と可能性について考察した。こうした実践は、1で述べた貧困地域の子どもに対して、また彼らを取り巻く種々の環境や文脈に対して、一定の意義ある変化をもたらすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、貧困地域の学校および学区に焦点を絞り分析・考察を行うことで、研究全体の中核的内容を構築することができた。またそうした内容に基づき執筆した学会誌への投稿論文が受理されるなど、一定の評価を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、主に関連資料等の分析を通して、事例分析で取り上げた「パブリック・アチーブメント」の実践の理念的および方法的特質を明らかにする。加えて、貧困地域で広域的・持続的に「パブリック・アチーブメント」のような実践を展開するための方策や条件について、他の類似事例との比較をもとに考察する。これらも基盤としながら、博士論文を執筆する。
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Research Products
(5 results)