2013 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動が植物の形態的生理的変化を介して病害虫抵抗性に及ぼす影響の解明
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13J10391
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
板垣 芳 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 湿度 / 二酸化炭素濃度 / 病害抵抗性 / Podosphaera Xanthii / 胞子発芽率 / 吸器形成 / 水ストレス / 形態的変化 |
Research Abstract |
気候変動に伴う物理環境の変化は, 植物の形態的生理的特性に影響し, その特性が病虫害抵抗性に影響を及ぼす可能性がある. 今年度は, 主に湿度環境およびCO_2濃度が植物を介して病害抵抗性に及ぼす影響を, 農業環境工学的な方法を用いて検討した、湿度環境およびCO_2濃度の影響を検討するために, キュウリ実生を気温30℃で相対湿度10%, 50%または90%に, あるいは日平均CO_2濃度を200,400または1000ppmに制御した人工気象器内で子葉展開まで育成し, うどんこ病菌(Podosphaera Xanthii)の接種試験を行った. 低湿度に順化したキュウリ実生において, P. xanthii接種後の病斑密度が減少する傾向が見られ, このことからうどんこ病抵抗性が向上していたと言える. 接種後の各試験区における胞子発芽や吸器形成の観察により, 低湿度順化キュウリ実生の特性は胞子発芽には影響せず, P. xanthiiの葉内への侵入を抑制したと考えられる. 低湿度に順化したキュウリ実生の葉内水ポテンシャルは正常な値であったことから, 葉の水分状態の違いが吸器形成に影響した可能性は低く, 高い飽差による水分状態以外の生理的変化や葉面の形態的変化がP. xanthiiの侵入を抑制したと考えられる. CO_2濃度200ppmに順化したキュウリ実生は, CO_2濃度400ppmおよび1000ppmに順化に順化したキュウリ実生よりもP. xanthii接種後の病斑密度が増加する傾向が見られた. 順化時のCO_2濃度が高いと葉面積当たりの乾物重や乾物率が大きくなる傾向が見られた. この葉面積当たりの乾物重や乾物率の変化はCO_2濃度によって葉の形態が変化していること示唆すると考えられる. 農業環境工学的な方法によって植物と植物病原体との関係を評価できたことは, 気候変動の影響を評価する上で新しい切り口となることが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
湿度環境が植物の形態的適応を介してキュウリうどんこ病の発達に及ぼす影響についての研究は, 海外専門誌に掲載され, 高い評価を得ることができた. また, 国内外の学会で研究成果発表を行い, 活発な議論および情報交換を行うことができた. CO_2濃度などの環境要因の影響や, 虫害抵抗性に関する研究は予備試験を重ねており, 研究の方向性が概ね整理されつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は, 平成25年度の研究で明らかになった各物理環境条件が植物の病虫害抵抗性に及ぼすメカニズムを, 植物の形態的生理的特徴から解明する, 形態的特徴として, 葉断面構造の観察や葉の元素分析を行い, 生理的特徴として, 蒸散速度や葉内水分状態などを定量化する. 虫害抵抗性の評価は, 実験手法を確立し, 湿度環境やCO_2濃度が植物を介して虫害抵抗性に及ぼす影響を定量的に評価する, また, 得られたデータから病害抵抗性や環境ストレス耐性との共通したメカニズムを検討する.
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Research Products
(5 results)