2014 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動が植物の形態的生理的変化を介して病害虫抵抗性に及ぼす影響の解明
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13J10391
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
板垣 芳 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 二酸化炭素濃度 / 病害抵抗性 / Podosphaera xanthii / CO_2飢餓 / 形態的変化 / 炭素蓄積量 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動に伴う物理環境の変化は,植物の形態的生理的特性に影響し,その特性が病虫害抵抗性に影響を及ぼす可能性がある.平成26年度は,農業環境工学的な方法によって植物育成時のCO_2環境が植物の病害抵抗性に及ぼす影響の定量的解明を行った. CO_2環境の影響を検討するために,キュウリ実生(非抵抗性品種‘北進’,抵抗性品種‘ときわ333’)を日平均CO_2濃度200,400または1000 μmol mol-1に制御した人工気象器内で子葉展開まで育成し,うどんこ病菌(Podosphaera xanthii)の接種試験を行った.その結果,育成時のCO_2濃度の上昇に伴ってキュウリ実生のうどんこ病抵抗性が高くなることが明らかとなった.CO_2濃度が標準大気よりも低い場合は濃度が高い場合よりもうどんこ病抵抗性が顕著に低下したのに対して,濃度が標準大気濃度よりも高い場合はうどんこ病抵抗性が穏やかに向上した.気候変動レベルでのCO_2濃度の上昇は,キュウリ実生のうどんこ病抵抗性を劇的には向上させないのかもしれない.病斑密度に対するCO2濃度の影響には品種間差があり,CO_2濃度の影響は非抵抗性品種よりも抵抗性品種で大きかった.CO_2濃度の上昇に伴って,葉面積あたりの乾物重や乾物率等が増大したことから,葉面積あたりの炭素蓄積量がうどんこ病抵抗性の変化に影響したと考えられる.ただし,CO_2濃度による葉の特性の変化には品種間差があり,非抵抗性品種よりも抵抗性品種で葉の特性の変化が大きかった.CO_2濃度がうどんこ病抵抗性に及ぼす影響には炭素蓄積量では説明できない抵抗性に関与するその他の要因も影響した可能性が考えられた.本研究で得られた成果は,気候変動に対する病害リスクの予測に役に立つだけでなく,植物生産技術への応用も期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CO_2環境が植物の形態的生理的適応を介してキュウリうどんこ病の発達に及ぼす影響についての研究は,先行研究よりも幅広い濃度範囲で検討し,さらに,うどんこ病に対して抵抗性・非抵抗性の品種を複数用い,うどんこ病菌の発達と寄主植物の形態的・生理的特性と関係を調べることができた.また,国内外の学会でこれまでの研究成果発表を行い,活発な議論および情報交換を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度~26年度の研究成果および他の研究の最新の知見から,平成27年度は病害抵抗性や環境ストレス耐性との共通したメカニズムを,病害虫抵抗性には共通した環境応答能力を介して制御されるという考えを基に,植物生理学的・生態学的な面から体系的にまとめていく予定である.
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