2014 Fiscal Year Annual Research Report
軟体動物頭足類にみられる鰓心臓に着目した心臓の進化発生学的研究
Project/Area Number |
13J10472
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
守山 裕大 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心臓 / 進化的新規形質 / 軟体動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
イカ、タコに代表される軟体動物頭足類は心臓を3つ持つことが知られている。一つは体心臓と呼ばれるもので全身に血液を送り込むものであり、他の二つは鰓心臓と呼ばれ、酸素を取り込む器官である鰓に血液を送ることに特化している。どのようにして頭足類は心臓を3つ持つようになったのか、その発生学的メカニズムを明らかにし、進化過程に迫ることが本研究の目的である。本研究ではヒメイカ(Idiosepius paradoxus)をモデル動物として用いている。本年度ではヒメイカ胚発生における遺伝子発現解析と組織学的解析を中心に行った。心臓発生において重要な役割を果たすことが報告されている遺伝子のヒメイカホモログを単離し、whole mount in situ hybridization法によって時系列的な発現様式を調べた。その結果、Nkx2.5が体心臓・鰓心臓両方の前駆細胞において発生の初期段階から発現していることが明らかとなった。このNkx2.5をマーカーとして、体心臓・鰓心臓それぞれの前駆細胞の由来を追跡した。その結果、ヒメイカでは心臓前駆細胞集団が4つ存在し、その内の二つの集団は正中で融合することで体心臓を、残りの二つの集団はそのまま融合することなくそれぞれが鰓心臓を形成することが示唆された。他にも体心臓、鰓心臓それぞれのマーカーを単離し、用いることで両心臓の由来を追跡していく。この為に現在ヒメイカ特異的抗体を作成するとともに、色素注入による細胞ラベル、そしてDNAコンストラクトを導入することによる特定遺伝子の発現追跡を目標として、受精卵への顕微注入の実験系を立ち上げている。DNAコンストラクト作成のためにヒメイカゲノムのFosmidライブラリーも作成し、現在Nkx2.5をinsertに含むようなクローンをスクリーニングしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心臓発生関連遺伝子のクローニングとその発現解析、またそれに伴う組織学的解析を順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は心臓前駆細胞の挙動を追い、体心臓・鰓心臓それぞれの由来を追うことを目標とする。それには色素注入による細胞ラベル、またDNAコンストラクトの導入によるトランスジェニックヒメイカの作成が必要となるが、初期胚への顕微注入法をまだ確立することができていないため、これが当面の目標となる。これまでの予備実験では卵殻が非常に硬く、針を貫通させることが出来なかった。そのため、薬剤などによる処理を初期胚に施すなどの方法を試みる予定である。
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Research Products
(8 results)