2013 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の生殖機能中枢制御を司る新たな神経回路の解明
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13J10475
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
善方 文太郎 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エストロゲン受容体 / 生殖機能 / GnRH / HPG軸 |
Research Abstract |
脊椎動物の生殖機能制御には、生殖腺から分泌される性ステロイドホルモンが脳へフィードバックし、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌量を調節する機構が知られており、これが適切に機能することで性成熟、性周期形成が可能となる。 しかし、性ステロイドホルモンの脳における受容からGnRH制御までを繋ぐ神経回路は未だに不明な点が多く残されている。 本研究では、性ステロイドホルモンを受容するニューロン群を直接解析するため、エストロゲン受容体α(ERα)をGFPによって特異的に標識したトランスジェニックメダカを作製した。これによってエストロゲン感受性を示すニューロンの細胞体から軸索の投射先までを視覚化することに成功した。ERαは核内受容体であるため、免疫組織化学などの手法ではその軸索まで観察することはできなかった。今回作製したトランスジェニックメダカを用いることで、神経連絡の詳細な解析が可能となった。現在、このGFP蛍光を標的に組織学的な観察を行っている。これによって脳内に発現するERα陽性ニューロンのうち、どの細胞がGnRHに軸索を投射しているかを同定する予定である。 また、組換えコンストラクト作製当初、ERα発現制御領域が未確定であったため、第1エキソンから上流、隣接する遺伝子までの3kbを増幅し、その直下にGFPを接続したコンストラクトを使用した。しかし、これによって作製した系統は組織中にGFPの発現がほとんど認められなかった。そこで、このコンストラクトにさらに第1イントロンまで含めたものを作製し、組換えに使用したところ、脳や生殖腺、肝臓などの組織でGFP蛍光が確認された。このことから、ERαの発現制御に重要なプロモーター、エンハンサーが第1イントロンに含まれている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ツールとなる性ステロイドホルモン受容体GFP標識トランスジェニックメダカの作製に時間を要してしまったため。メダカエストロゲン受容体の発現制御領域が不明だったため、コンストラクト設計に予定以上の試行錯誤を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
予定よりトランスジェニックメダカの作製が難航したことを考慮し、当初の予定ではエストロゲン受容体(ER)およびアンドロゲン受容体(AR)両方に着目した解析を目指していたが、先行して完成したERトランスジェニックの方を優先的に解析する。実際に、過去の研究では生殖制御機構におけるフィードバック現象はエストロゲンに関しての解析が中心的であり、知見も蓄積しているため、こちらを中心に据えることで生殖制御機構に関する理解を深めていく。ERトランスジェニック系統を使用して、まずは神経投射の解析を行い、生殖制御に主要内細胞群を絞り込んでいく。ARに関してはまだトランスジェニック系統が得られていない状況であるが、ERに関する解析と平行して引き続きトランスジェニック作製を進め、完成し次第、解析につなげて行きたいと考えている。
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Research Products
(1 results)