2013 Fiscal Year Annual Research Report
銀河の衝突によって形成されたガス円盤から探る銀河の進化
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13J10480
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 準子 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC 2)
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Keywords | 銀河 / 分子ガス / 電波観測 |
Research Abstract |
宇宙の主要な構成要素である銀河の進化の解明は、宇宙を理解する上で重要課題である。本研究の目的は、銀河同士の衝突を経て合体した銀河(衝突銀河)が、どのような銀河に進化するかを観測的に解明することである。古くから「衝突銀河は、楕円銀河に進化する」と考えられてきたが、近年の数値シミュレーションでは「一部は円盤銀河に進化する」という説が示されている。しかし、これを決定づける観測結果は存在しなかった。衝突銀河が円盤銀河に進化するには、円盤の基礎となる分子ガス円盤が必要である。そこで、私は、全37個の衝突銀河のサンプルを用いて、次の二つの課題に取り組んだ。 1、分子ガス円盤の存在の実証 : はじめに、衝突銀河に分布する分子ガスを観測した電波観測データを画像解析した。データは、アルマ望遠鏡や米国サブミリ波干渉計で取得したものを使用した。次に、回転するガス円盤の理論モデルを作成した。観測された分子ガスと理論モデルの速度分布を比較した結果、24天体で分子ガス円盤を発見した。 2、分子ガス円盤の進化の検証 : はじめに、分子ガスと星が分布する半径を求めて、それらの半径比を導出した。次に、分子ガスと星成分の総質量比を求めた。同じ解析手法を用いて、複数の円盤銀河と楕円銀河についても半経比と質量比を求めた。衝突銀河・楕円銀河・円盤銀河の三つのサンプルで半径比と質量比を比較した結果、約70%の衝突銀河は楕円銀河と類似した性質を示した。これらの銀河は、楕円銀河に進化していく可能性が高いと示唆される。一方、10%未満と少数ではあるが、円盤銀河と似た性質を示した衝突銀河の存在も明らかになった。 このように、本研究では、衝突銀河に分布する分子ガスの特性を調べ、銀河の進化について新知見を得た。これは、過去に衝突を経験している私たちが住む天の川銀河の形成の本質に迫るという点でも大きな意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおり、総合的にはおおむね順調に進展している。研究計画を細分化して評価すると、解析や議論の部分は計画以上に進展しているが、論文の出版準備にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおりに研究を推進する。解析・議論・論文執筆・成果発表というように研究計画を細分化してみた場合、それぞれ部分の現在までの達成度には若干ばらつきがある。そのため、今後は全体のバランスを考慮しながら、作業の優先順位を付けて研究に取り組む。
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Research Products
(5 results)