2013 Fiscal Year Annual Research Report
学習の臨界期を調節する分子の探索と、臨界期を制御可能なモデル動物の開発
Project/Area Number |
13J10484
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中森 智啓 北里大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 臨界期 / 刷り込み学習 / Arc/arg3.1 / in ovo electroporation法 |
Research Abstract |
臨界期における学習に重要な分子を探索し、臨界期を制御可能なモデル動物の作成を目指すことが本研究の目的である。当該年度は、臨界期における学習時に特異的に活動する細胞の同定・可視化を行った。具体的には、最初期遺伝子であるArc/arg3.1のpromoterの下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)をつないだ遺伝子配列を含むベクターを作成した。また、遺伝子導入された細胞が認識できるようにchickβ-actin promoterの下流に赤色蛍光タンパク質(mCherry)をつなげたベクターを作成した。それぞれの目的配列はトランスポゾン(Tol2)配列内に組み込んだ。Stage10 (10~12体節胚)の前脳に上記2種のベクター及びトランスポザーゼ発現ベクターを注入し、electroporation法によって遺伝子導入を行った。遺伝子導入された胚は、孵化するまでインキュベーションを行った。孵化した個体に刷り込み学習を行わせて24時間後に終脳の視覚野での蛍光タンパク質の発現を観察すると、非学習個体に比べてmCherryの発現は差がなかったのに対し、EGFPの発現は有意に高くなっていた。このことから、学習によってEGFPの発現が誘導されていることが分かった。また、EGFPの発現していた細胞はArc/arg3.1を発現しており、神経活動依存的にEGFPの発現が見られることが分かった。刷り込み学習の臨界期前後で発現量が変化する遺伝子や、学習に伴い発現量が変化する遺伝子を網羅的に抽出し解析するために、DNAマイクロアレイ法を用いた解析を行った。臨界期中に発現が高く、さらに学習によって発現量に変化が見られる遺伝子を選び、いくつかの遺伝子に関してリアルタイムPCRによる遺伝子発現量変化の確認やin situ hybridizationによる発現細胞・領域の特定を行った。当該年度は、臨界期中の学習時に活動する神経細胞の特定に成功した。これにより、臨界期制御に関わる遺伝子の特定や詳細な解析が可能となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、当該年度は臨界期における学習で活動する細胞の可視化および、特定された細胞の単離であった。しかしながら、すでにマイクロアレイを用いて、臨界期の制御に関与している可能性のある遺伝子のピックアップを行い、いくつかの遺伝子の関してはリアルタイムPCRやin situ hybridizationによる、発達依存的あるいは学習依存的な遺伝子発現量・発現部位の変化を解析している。そのため、当該年度においては、当初の計画以上に研究が進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
孵化後間もないchickから得られた脳神経細胞の培養系を用いて、マイクロアレイおよびリアルタイムPCRの結果から臨界期の制御に関与している可能性があると判断された遺伝子のノックダウンおよび過剰発現系を作成し、神経細胞の発育に伴う形態的・性質的な変化への影響や、既に臨界期学習にとって重要であることが分かっているNMDA受容体のサブタイプであるNR2Bの発現への影響について調べる。この過程において、臨界期制御に重要であると見なされた遺伝子の発現を個体において変化させた場合の、学習効率や細胞の発育への影響を調べる。遺伝子導入効率が低い場合はウイスルベクターの使用も検討する。
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Research Products
(3 results)