2013 Fiscal Year Annual Research Report
分光情報と光反射モデルに基づいた物体表面の反射特性推定
Project/Area Number |
13J10497
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
望月 宏祐 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | コンピュータグラフィックス / コンピュータビジョン / 分光情報 / 光反射モデル |
Research Abstract |
本研究では絹織物などを対象に, 物体表面で起こる光反射のプロセスを光反射モデルと呼ばれる数学モデルで記述し, そのモデルパラメータと物体表面の三次元的な幾何情報を画像から推定するために画像計測に基づいた光反射計測手法とその計測系を開発した. ここでは大きく分けて4つの手法を提案した. (1)絹織物表面をデジタルカメラとマクロレンズで拡大撮影して, その画像に対してヒストグラム解析することで画像情報から絹糸の拡散反射成分のみを抽出し, そこから分光反射率を推定する手法を提案した. この結果, 一般的な分光測色機では正しく計測できなかった絹織物の分光反射率を高い精度で推定できるようになった. (2)分光反射率とモデルパラメータの推定精度を向上させるため, マルチバンドカメラを用いた絹織物の計測手法を提案した. (3)物体表面形状の推定のため照度差ステレオ法に基づいて複数の計測画像から絹織物表面の法線ベクトルを推定する手法を提案した. ここで試作した計測系では, 光源からの入射角を変化させながら物体を照明して画像計測し, 提案手法を用いて絹糸の3次元的な法線ベクトル分布を推定した. (4)推定した分光反射率や形状情報に加えて, 別途計測した実シーンの照明光源分布を用いて任意のシーン照明環境を想定して絹織物を3DCG再現するための手法を提案した. また, 複雑な相互反射を持つ物体の色を精密に再現するため, 大域照明モデルと分光的なモデルに基づいた映像生成手法を提案した. このときGraphics Processing Unit (GPU)を汎用計算に用いるGeneral PurposeGraphics Processing Unit (GPGPU)と呼ばれる手法に基づいた分光ベースのレイトレーシング法を提案した. 処理速度の低下や記憶容量の増加を防ぐため, レンダリングアルゴリズムに加えて分光情報の圧縮による高速化手法を合わせて提案した. そして実際に存在する物体を相互反射や透過も含めて提案手法で3DCG再現し, その色再現精度を視覚実験だけでなく, 分光放射輝度計により計測し, 色度座標上で定量的に比較することで提案手法の妥当性を検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 絹織物のように複雑な表面構造を持つ物体の反射特性の推定手法開発にっいて当初の計画以上の成果を得ることができた. 従来では, こういった複雑な表面構造を持つ物体の反射特性の画像からの推定は困難であった. この成果は日本色彩学会全国大会や国際会議(IASDR2013)等で発表した. 特に日本色彩学会からは日本色彩学会全国大会発表奨励賞をいただき, 高い評価を得ることができた. また, 実シーン照明環境下にある物体を高精度に3DCG再現する技術を開発し, その成果は画像電子学会誌に掲載された. そして, 相互反射や透過がある物体を高精度に3DCG再現する技術を学術論文としてまとめ, 日本デザイン学会誌に掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては, 画像から物体表面の材質の含有量などを推定する手法を開発する. 現在は, 工芸作品を対象に朧銀などの合金の組成を調べているが, 今後, これを発展させたい. 現時点では, この合金の分光ベースの光反射モデルの構築ができたので, 今後は, まずこの反射モデルに基づいて画像からその組成成分を推定できるようにしたい. これは, 古い年代に制作された文化財などの材質推定においても有効であると考えられる. さらに, 現在開発中の光反射計測系を改良し, この手法を不均質誘電体へ適用することも予定している. より多くの物体に対して画像から物体表面の物理的な材質の組成を調べる必要があるが, そのためには, それぞれの物質の分光的な特性を調べる必要がある.
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