2013 Fiscal Year Annual Research Report
ベリリウム9核のクーロン分解反応を用いた軽元素起源の爆発的元素合成の研究
Project/Area Number |
13J10601
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 信之 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 元素合成 / クーロン分解反応 / 中性子過剰核 / 中性子ハロー核 |
Research Abstract |
宇宙を構成する元素の起源の解明には、核物理と宇宙物理両方の理解が必要となる。ビッグバン直後、H, He, Liといった軽い元素は合成されたが、質量数Aが5と8の原子核は束縛核として存在しないため、これより重い元素は合成されなかった。このA = 5.8の"ギャップ"を越えて元素が作られる過程は、恒星の中のトリプルα反応が主な経路であると考えられてきた。この反応によって3つのα粒子が反応しA = 12の12C (炭素)が合成される。すなわち、多様な宇宙と生命の誕生の為に、この反応は必要不可欠である。しかし、太古の星(金属欠乏星)の超新星爆発において起こるとされるHeを起源とする爆発的元素合成過程(軽いr過程)では、α(αn, γ)9Be反応(α+α+n→9Be+γ)がA=5.8の"ギャップ"を越えるもう一つの重要な経路となりうることが、近年の理論的研究で示され、注目されている[1,2]。もしこれが事実とすれば、トリプルα反応に代わる新たなバイパスができることになり、元素合成シナリオの大幅な書き換えが必要となる。 我々は、α(αn, γ)9Be反応の実験的測定に先立ち、中性子数20-28領域の中性子過剰核29Ne, 33,35,37Mg, 39,41Siについて、核力分解反応、クーロン分解反応を世界に先駆けて行った。さらにこの実験の詳細なオフライン解析を進め、いくつかの重要な結果を得ている。特に31Me, 37Mgにおける全く新しいp波中性子ハロー構造を発見し、注目されている。これらの成果の一部は、'Deformation-Driven p-Wave Halos at the Drip Line : 31Ne″というタイトルのレター論文としてアメリカ物理学会のPhysical Review Letter誌に受理された。また、イタリア・フィレンツェで行われた国際カンファレンス(INPC2013)、千葉で行われた国際カンファレンス(APPC12)において口頭発表(英語)を行い、それぞれ高い評価を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
α(αn, γ) 9Be反応の測定で用いるクーロン分解反応の手法を他の核に応用し、いくつかの重要な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、α(αn,γ)9Be反応の測定をRI ビームファクトリーのSAMURAI実験施設で行うための準備を進める。具体的な実験セットアップを提案すると共に、検出器の準備、ビームタイムの見積もりを行う。特に粒子の位置検出器の準備は本研究の要となる部分であり、十分な準備が必要である。
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Research Products
(8 results)