2014 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸小型漁船漁業を対象とした漁業技術の数値化に関する研究
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13J10728
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
長谷川 浩平 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 漁具モニタリング / 超音波テレメトリー / ピンガー / タチウオ漕ぎ釣漁業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、沿岸漁業において重要な役割を担っている小型船による漁業の操業の効率化に貢献できる操業中の漁具をリアルタイムでモニタリングするシステムの確立を目的とする。昨年度は、漁具深度計の試作システムを構築し、実装実験を行った。その結果、漁具深度の連続的な測定が可能であることを確認したが、いくつかの課題も挙がった。今年度は試作システムを改良し、それらの課題を解決することを試みた。 もっとも大きな問題は、深度データに外れ値が見られたことである。この外れ値の原因はマルチパス(多重反射)によるものだと予想された。マルチパスは、無線通信において、発信された信号が反射、屈折することにより様々な経路を経て受信側に到達することである。漁具深度計においては、漁具に装着した超音波発信器(ピンガー)から送信される音響信号が海面や海底に反射することでマルチパスが発生する。2014年の5月に本学所有の小型船を用いて外れ値の原因の特定を試みた。その結果、外れ値の原因は、音響信号の海面反射であることが判明した。 海面反射による影響を防ぐために漁具深度計の改良を行った。改良したシステムの有効性を検証するために、前述した2014年5月の実験データを用いてシミュレーションを行った。改良したソフトウェアの方法で計算を行った場合、ほとんどの外れ値が無くなることが確認できた。 もう一つの昨年度からの課題として、ハイドロフォンの設置方法の検討がある。昨年度の実装実験では、ハイドロフォンを十分に沈めるために曳航体とともに船尾から曳航する方法を用いた。しかし、この方法では、操業間の移動時にハイドロフォンを上げ、操業開始時にハイドロフォンを投入する作業に労力を要した。そこで、曳航体を必要としない、錘と一体型のハイドロフォンを開発した。これにより、ハイドロフォンの上げ下ろしの作業が簡易となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションやフィールドテストを通して基礎実験、実装実験を遂行して十分なシステムの性能評価を行った。その結果、本システムが音響信号の反射の影響でエラーデータが発生することや、機器の設置に関して操業の妨げになる可能性があるという問題点を明らかにした。前者の問題点に対しては、予備実験により理論的に分析を行い,問題の原因の特定を行った。そして、エラーデータが発生する原因が音響信号の海面反射によるものだということを確認した。その対策としてソフトウェアとハードウェアの両面でシステムの改良を行った。そして、改良したシステムを用いた再検証実験により講じた対策が有効であることを証明した。これにより、本研究の目的のうち、沿岸小型漁船漁業に応用可能な漁具のモニタリングシステムの構築はほぼ完了したことから、研究状況は順調に進展していると考えられる。研究成果についても昨年度中に3回、国際学会で発表を行っており、継続的に得られた知見の発信を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、小型漁具の深度情報をリアルタイムで可視化する小型漁具監視システムの開発を行った。本システムを用いることにより対象漁具の深度情報を連続的に測定することができることが分かったが、本システムの有効性を定量的に評価できていない。そこで今後の研究としては、さらなる実装実験により本システムの操業支援効果を定量的に評価することを行う。 実験は、本システムで表示される深度情報を確認しながら操業を行う場合と、深度情報がない状態で操業を行う場合とを比較することにより、本システムの有効性を検証する。実験対象とするタチウオ漕ぎ釣漁業では、漁具の深度を魚群探知機に表示される魚群深度に合わせるながら漁を行う。つまり、本システムがあれば、この漁具の深度調整を支援することができると考えている。そこで、漁具の深度と同時に魚群探知機の映像データを記録して、両深度を合わせることで、漁具が魚群のいる深度にうまく合わせられているかを確認できる。そして、本システムの深度情報がある場合とない場合でこの深度調整の正確さに違いが出るかどうかを確認することで、操業支援効果の評価を行う。漁業者によってこの効果に違いがある可能性があるため、複数の漁業者を対象に実験を行う。また、この漁業は季節ごとに漁具を投入する深度が変わる。漁具の投入深度による効果の違いも検討するために本実験を今年度内に夏と冬の2回実施する予定である。 さらに本システムで漁具に取り付ける超音波発信器に深度センサーだけでなく様々なセンサーを取り付けることで、漁場の環境情報を測定することをめざす。
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Research Products
(4 results)