2013 Fiscal Year Annual Research Report
脂質ベシクル変形機構の解明;三次元画像解析とシミュレーションによるアプローチ
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13J10807
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
坂下 あい お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ベシクル / 形状解析 / 動的三角格子モデル / ADEモデル |
Research Abstract |
生体活動を維持する重要な細胞小器官の一つに、ミトコンドリアがある。その内膜にはクリステと呼ばれる特殊な襞状構造が存在するが、我々はこれが外膜による空間拘束の影響によるものであると仮定し、形状の起源を探究した。モデル系として脂質のみからなるモデル生体膜ベシクル(以下、ベシクル)を用い、実験・シミュレーション・理論の三方向から形状の定量化することで、拘束条件と形状の関係性を定量的に理解することに成功した。 研究計画初年度である今年は、既に撮影していた実験結果を以下の二つのカテゴリーに分類した : 1)外側のべシクルが球形の場合。2)外側のべシクルが非球形の場合。ミトコンドリアは後者に近いが、今回は簡単のために前者の形状定量化を行った。シミュレーションには動的三角格子モデル(Noguchi, et al., 2009, J. Phys. Soc, Jpn.)を拡張した手法を構築し、実験結果と比較しながら形状を定量化した。その結果、実験で得られた球状ベシクルに内包されたベシクルの変形過程を忠実に再現することに成功した。その後はArea-difference--elasticityモデル(Svetina, et al., 1989 Eur Biophys.)を拡張し独自のモデルを作成したところ、今回の結果をよく記述できた。 これはミトコンドリアのような複雑な構造が空間の制限だけで再現できるという非常に重要な結果である。同様の機構では他にも細胞分裂の胚にみられる構造も観察されたため、応用の余地があると言える。以上の結果は、物理学におけるベシクル形状研究がより生物学に近い形状の理解を可能にする第一歩になったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は一年次及び二年次に予定した研究を計画通り達成でき、その結果を学術論文として投稿することができたため、達成度は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は就職のため、今年度で日本学術振興会特別研究員を辞することとなった。そのため二年次に予定していた研究は推進しない予定である。
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Research Products
(10 results)