2014 Fiscal Year Annual Research Report
児童期におけるアーギュメント・スキルの発達過程の検討
Project/Area Number |
13J10839
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野田 亮介 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アーギュメント / マイサイドバイアス / 意見文産出 / 理由産出 / 反論想定 / 道徳 / 目標提示 / 動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,アーギュメント・スキル発達の支援方法について考案することである。本年度は,昨年度に引き続き,意見文産出において自分に有利な情報を積極的に提示し,自分に不利な情報を無視するという「マイサイドバイアス」に着目して研究を行った。なお,いずれの研究においても立場選択が必要になる道徳的議題を用いた。 第一に,マイサイドバイアスが生起する原因を明らかにするため,大学生を対象とし,反論想定の特徴と,多様な反論想定を促進する方法について検討した。その結果,反論の中でも自分が賛成する立場の「欠点」に関する反論産出が困難化する傾向が認められた。ただし,第三者の視点を与えて反論想定を行うと,賛成立場の欠点に関する反論産出も促進されることが示された。このことは,マイサイドバイアスが書き手の視点に依存して生起している可能性を示している。 そこで第二に,書き手の視点を固定化する活動として「立場選択」に着目し,大学生を対象に立場選択が理由産出に与える影響について検討を行った。その結果,立場選択によって反論の産出が抑制され,特に賛成立場の欠点に関する反論の産出数が減少することが示された。すなわち,立場選択による視点の固定化は,マイサイドバイアスを強化する可能性が示された。 第三に,児童を対象に効果を検証した目標提示介入(反論想定と再反論を促す介入)の効果に,意見文産出に対する書き手の動機づけが与える影響を検討した。中学生と高校生を対象とした実験の結果,目標提示介入には反論想定と再反論を促す効果があり,特に興味価値や成功期待が高い書き手に高い効果をもつことが示された。 以上の研究は,(1)意見文産出におけるマイサイドバイアスの特徴を明らかにし,その克服方法について実践的な示唆を得た点,ならびに(2)目標提示介入の適用範囲を児童から高校生まで拡張し,実践への応用可能性を高めた点で意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度の課題であった,アーギュメント・スキルを支える要因の学年差の検討について,中学生から大学生までを対象としたデータを集めることができた。全データの分析については現在遂行中であるが,分析を終えたいくつかのデータについては,国際学会での発表や論文としての投稿を完了しており,すでに採択の評価を受けたものもある。以上のことから,本研究の達成度を「①当初の計画以上に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,高校生や大学生を中心とした実験により,マイサイドバイアスを生起させる要因について基礎的な知見を得た。今後は,特に児童期におけるマイサイドバイアスを生起させる要因を明らかにし,発達的差異について解明するための調査を行う。また,アーギュメント・スキルは「何を良い意見(議論)とするか」というアーギュメント・スキーマと関連していると考えられるため,今後はアーギュメントの産出だけでなく,アーギュメントの評価についても検討を進め,産出と評価の関連からアーギュメント・スキルの発達的差異や,それに応じた新たな指導方法を考案するための示唆を得る。
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Research Products
(5 results)