2013 Fiscal Year Annual Research Report
アシルジカチオンの創出と置換基一般的な芳香族求電子置換反応の実現
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13J10840
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒内 寛明 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 芳香族求電子置換反応 / 超強酸 / 反応機構解析 / イソキノロン / イソシアネート / カルバメート |
Research Abstract |
創薬化学に代表される機能性分子合成において、芳香族化合物は最も重要な構造単位の一つである。しかし、置換基に依存して芳香環の反応性が大きく変化するため、多様な置換基を複数有する芳香族化合物を自在に合成することは現代においても未解決な課題である。本年度は、強力な求電子種であるアシリウムイオンの等電子求電子種であるN-プロトン化(またはアルキル化)イソシアネートの生成を可能にする超効率的な脱離基の探索を行った。カルバメートにおけるC-O結合の選択的な解裂の効率化を実現するために強ブレンステッド酸によって速やかに活性化され脱離する新規脱離基を検討した。その結果、安価な抗炎症剤であるサリチル酸メチルを脱離基とすることで、強酸中でサリチル酸メチル部位をプロトン化し、分子内カチオン性水素結合を通じて効率的にカルバメートを活性化する手法を見出した。この改善によって、以前は70℃以上での加熱が必要であったカルバメートの活性化が、室温以下でも容易に進行するようになった。 また、プロトン化イソシアネートの有機合成への応用を目指し、芳香族化合物の修飾反応を行った。この結果、電子供与性のアルコキシ基から電子求引性のニトロ基まで幅広い電子状態を持つ置換基を有する置換ベンゼンを求電子活性の向上した反応活性分子種によってさらに置換修飾することができることが明らかになった。また、応用性の拡大を目指し、反応活性分子種および置換ベンゼンに光学活性中心をもつ場合にも光学活性を失わず反応が適用可能であることを検証したところ、光学活性が失われやすいことがしばしば問題を引き起こすアミノ酸誘導体において、光学活性を完全に保持したまま反応が進行することが明らかになった。本研究結果は簡便にジヒドロイソキノロン誘導体を合成できる新規手法の提示であり、新規医薬品シード化合物の合成への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定である置換基一般的な求電子置換反応を実現することのできる求電子種を検討した。この結果、イソシアネートカチオンを利用することでアルコキシ基からニトロ基に至るまで幅広い置換基に対応した求電子置換反応が実現できたため、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で新たに浮上した課題として、イソシアネートカチオンが有用な求電子種であり、その適用限界が明白でないことが挙げられる。そのため、分子間反応、分子内中員環構築反応など、通常は困難とされている芳香族求電子置換反応についても検討を行ってゆくこととする。また、当初の予定である活性化アシリウムイオンの反応も併せて検討する。
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Research Products
(2 results)