2013 Fiscal Year Annual Research Report
毒素に対する可食性IgA植物抗体の防御効果に関する研究
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13J10915
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
中西 勝宏 静岡県立大学, 大学院薬学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分泌型IgA / Plantibody / Shiga toxin |
Research Abstract |
分泌型IgA抗体はH鎖、L鎖、J鎖、分泌片(SC)で構成されており、消化管などの粘膜組織において主要な防御因子として働いている。本研究では、分泌型IgAに着目し、植物の遺伝子組み換え技術を利用して、経口摂取によりShiga toxin1 (Stx1、腸管出血性大腸菌の産生する毒素)による食中毒を治療できる分泌型IgA発現植物を作製することを目的としている。 これまでに、Stx1のBサブユニット(Stx1B)に特異的なマウスハイブリッドIgA (Stx1Bに特異的なIgGの可変部をもつIgA)を作成している。今回ハイブリッドIgAのH鎖、L鎖およびJ鎖、SCの4つの遺伝子を、アグロバクテリウム法によりモデル植物であるシロイヌナズナに導入した。得られた形質転換体が分泌型ハイブリッドIgAを発現していることをwestern blot解析により確認した。また、発現した植物抗体が固相化したStx1Bへの結合性を保持していることをELISAにより確認した。さらに、植物抗体でStx1を処理することにより、Stx1のVero細胞に対する細胞毒性を中和できることを確認した。可食性植物であるレタスの形質転換体も作製し、発現した分泌型植物抗体がStx1Bへ結合できることを確認した。 以上より、Stx1の細胞毒性を中和できる分泌型ハイブリッドIgAを発現する植物の作製に成功した。 また、植物と動物の糖鎖の違いが、植物抗体を投与した際の機能や安全性に影響を与える可能性が指摘されている。そこで、植物で発現させた外来タンパク質の糖鎖修飾を調べるため、植物で発現させたマウス来SC(植物SC)をモデルに糖鎖構造をレクチンプロット、抗糖鎖抗体を用いたwestern blotにより解析した。動物細胞で発現させたSCと比較し、植物SCに植物特有の糖鎖修飾がされていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画であった分泌型IgAを発現するシロイヌナズナとレタスを作製することができた。そして、当初は26年度の計画であったin vivoでのStx1の細胞毒性の評価モデルの構築について一部実験を行い、Stx1によるマウス大腸が障害を受けている傾向を観察できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナとレタスで発現させた植物抗体のin vivoでの作用を解析する。まず、マウスを用いてStx1の細胞毒性を評価するためのin vivoでのモデルを構築する。そして、構築した評価系を利用して、抗体発現植物を経口投与した際のStx1の毒性の中和効果を調べる。 また、消化酵素への耐性といった分泌型IgAの機能を植物抗体と動物細胞を利用して作成した分泌型IgAとで比較することで、植物と動物の糖鎖修飾の違いによるIgAの機能への影響を評価する。 さらに、植物抗体の発現能が後代に渡って維持されるかどうかを検討する。
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Research Products
(5 results)