2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J10924
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 友樹 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 不安障害 / 恐怖条件づけ / 恐怖反応の消失 / 恐怖反応の復元 / 下辺縁皮質 / シナプス伝達 / 内因的興奮性 |
Research Abstract |
過度の恐怖は不安障害の特徴であり、治療法の改善には恐怖の制御機構の解明が肝要である。筆者は、恐怖反応の制御に関与する神経細胞が持つ性質を明らかにするべく、研究を行った。マウスに文脈的恐怖条件づけおよび消失トレーニングを課し、恐怖反応を獲得および消失させた。脳急性スライス標本を作製し、消失を担う脳領域である下辺縁皮質(IL)の錐体細胞よりパッチクランプ記録を行った。細胞への入力に直結するシナプス伝達効率、および入力に対する出力しやすさを表す内因的興奮性を評価するため、微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)、および注入電流に対する発火数をそれぞれ測定した。結果、条件づけのみの群に比べ、消失群の細胞は有意に高い発火数を示すことが明らかとなり、内因的興奮性の上昇が示唆された。消失群の細胞は高い入力抵抗を有していたため、電位依存性チャネルの変化が原因として考えられる。ILは恐怖反応を抑制する脳領域であるので、入力に対するIL錐体細胞の感受性の増大が、恐怖反応の抑制(=消失)に寄与すると考察される。 不安障害の治療には、消失トレーニングを基盤とする曝露療法が主に用いられる。しかし不安障害の再発率は約40%と高く、再発機構の解明が急務である。そこで筆者は、再発に寄与するとされる現象である「復元」に着目し、それを担う細胞が持つ性質を検討した。筆者の研究室の先行研究により、復元にもILが重要であることが示されているため、IL錐体細胞について先と同様に検討した。結果、復元を誘導した群は消失群に比べ、mEPSC頻度が有意に低いことが明らかとなった。この結果は、復元群のILにおけるシナプス入力の減少を示唆している。さらに、伝達物質放出確率(の低さ)の指標であるペアパルス比を測定すると、復元群は消失群よりも有意に高かった。以上より、放出確率の低下に伴うILへのシナプス入力の減少が、恐怖反応の抑制の失敗(=復元)に寄与しているものと考察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、恐怖反応の消失に関わる神経細胞の性質を明らかにした。その原因となるチャネルの特定までには至っていないものの、臨床上重要な意義を持つ恐怖反応の復元についても検討し、それに関わる細胞の性質を明らかにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
消失および復元に関わる神経細胞が持つ性質の分子基盤について検討する。また、復元は消失を起こした後で初めて起こるようになる現象であるので、2つの現象の相互作用に着目した検討も行っていきたい。
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Research Products
(8 results)