2014 Fiscal Year Annual Research Report
麻疹ウイルスに対する個体レベルでの感染防御の分子機構の解明
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13J40020
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
有木(高木) 宏美 北海道大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 麻疹ウイルス / I型IFN / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
麻疹ウイルス(Measles virus, MV)はヒトCD150を受容体とし、細胞に感染するため、マウスを用いた解析が困難であった。そこでヒトCD150 Transgenic mice(CD150Tg)を作製し、IFNARKOマウスと掛け合わせることで、MV感染モデルマウスであるCD150Tg/IFNARKOマウスを作製した。このマウスを用いて、MVに対する宿主応答とMV感染により誘導される免疫抑制機構を明らかにすることを目的として研究を行った。 MV感染時に誘導されるIL-10はMV誘導性の免疫抑制機構の一つと考えられているが、主たる産生細胞は同定されていなかった。そこでIL-10産生細胞の同定を行うためIL-10 Venus reporter miceとCD150Tg/IFNAEKOを交配したCD150Tg/IFNARKOIL-10Venusマウス腹腔内にMVを感染させ、2日後に脾臓細胞を単離し、FACSにて産生細胞の同定を試みた。結果、CD4+T細胞にてIL-10の高産生が確認され、CD19+ B細胞、CD8+ T細胞、CD11c+樹状細胞ではIL-10産生はほとんど起こっていなかった 。 これまでの研究で我々は樹状細胞においてMVの核酸はTLR7-MyD88経路とMDA5/RIG-I-MAVS経路によって認識されI型IFNの産生が誘導されることを明らかにした。TLR7はエンドソームに存在するので、TLR7がMV由来の核酸を認識するためには核酸がエンドソームに運ばれなければならない。そこで我々はTLR7の認識にオートファジーが関与するかについてオートファジーの阻害剤を用いて検討を行った。その結果、オートファジー阻害剤で細胞を処理するとMVによるI型IFNの誘導が阻害された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CD150Tg/IL-10V/IFNARKOマウスにMVを腹腔内投与し、脾臓よりCD4+, CD8+, CD11c+, CD19+細胞を単離し、IL-10 Venusの発現をフローサイトメトリーにて解析したところ、CD4+細胞でIL-10 Venusの発現が確認された。また単離した細胞を抗CD3抗体、LPS、PMAで刺激し、産生されるIL-10の量をELISAにて測定したところ、抗CD3抗体で刺激したCD4+細胞の培養上清でIL-10が大量に産生されていた。この結果よりMV感染時にはCD4+細胞よりIL-10が産生され、免疫抑制機構の一端を担っていることが示された。 マウスを用いた解析より、樹状細胞ではMVの認識によりTLR7-MyD88経路とMAD5/RIG-I-MAVS経路依存的にI型IFNが産生されることを報告した。エンドソームに存在するTLR7が如何にして細胞質で複製するウイルス由来の核酸を認識するかについて、オートファジーの関与を調べた。結果、MV感染時に樹状細胞でもオートファジーが誘導されており、オートファジー阻害剤で処理したところ、I型IFNの産生が減弱した。これらは樹状細胞ではMV感染によりオートファジーが誘導され、エンドソームに核酸が認識される可能性が示唆された。 実験計画におおむね従って進めており、結果も順調にでていることから(2)おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究より、MV感染時に誘導されるIL-10産生はCD4+T細胞が主たる産生細胞であることが明らかとなったが、如何にしてMVがIL-10高産生のCD4+T細胞を誘導するかについては不明である。MV感染樹状細胞とnaive T細胞を共培養するとIL-10だけではなく、IL-13も高産生されていた。一方、Th2サイトカインであるIL-4はMV非感染樹状細胞との共培養と比較して、有意差はなかった。そこで、IL-10, IL-13高産生T細胞の誘導機構を明らかにすることを予定している。 また、MV感染によってアレルギーの増悪化が報告されているが、MV感染だけではなく、そのほかのウイルス感染時のTh2免疫応答機構を明らかにし、MV感染時と比較することで、MV感染時の特色ある免疫抑制機構をより詳細に明らかにできると考えている。
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Research Products
(3 results)