2014 Fiscal Year Annual Research Report
視神経の軸索投射におけるタンパク質間相互作用のダイナミックな制御
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13J40151
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
羽毛田 聡子 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軸索投射 / 視神経 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
1. larとptp69Dの2重変異体のレスキュー実験 larとptp69Dの二重変異体に対して、Larタンパク質のどの部分が機能しているのかを解析した。(1)野生型、(2)細胞内ドメイン欠損型、(3) 細胞外ドメイン変異型のLARをGal4-UASを用いて視神経特異的に発現させ、二重変異株のレスキュー実験を行う系統を作成し、視神経の軸索走行に対する役割を解析した。その結果、LARタンパク質全長がR7およびR8の軸索投射で必須なことが分かった。そこでLARの2つの脱リン酸化ドメインのうち、(4)第一脱リン酸化ドメイン機能欠損型、(5)第二脱リン酸化ドメイン機能欠損型あるいは(6)両者ともに欠くものを用いて脱リン酸化活性の必要性について解析した。その結果、R8のM3への投射には脱リン酸化活性が必要でないことが判明した。一方R7の軸索投射には第一脱リン酸化ドメインの活性が必要であることが分かった。この結果はLARが視神経の種類、または投射の段階に応じて機能を変化させていることを示唆している。 2. LarおよびPtp69DとGogoとの相互作用 LarおよびPtp69DがGogoを脱リン酸化しているのではないかと考え、遺伝学的な相互作用を解析した。larとptp69Dの2重変異体にGogoの野生型、リン酸化様(DDD)、脱リン酸化様(FFD)変異型の遺伝子を導入しR7およびR8の投射を調べた。しかし、どの型を発現させても2重変異体と比べて明らかに変化したものはなかった。また、Gogoの野生型、リン酸化様(DDD)、脱リン酸化様(FFD)の過剰発現系に対し、RNAiを用いてlarとptp69Dの発現を抑えることによる表現型の変化を観察した。しかし、表現型に一貫性がなく明らかな相互作用があるとは言えなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LarおよびPtp69Dのショウジョウバエ視神経R8とR7の軸索投射における機能解析を目的として研究を遂行した。Gogoとの相互作用の解析について変異型とGogoの過剰発現を組み合わせた系統作成は順調に進んだが、複数個体を何度か解析した結果、いずれの実験においても相互作用の存在を証明するような有意な差が得られなかった。一方larとptp69Dの二重変異体のレスキュー実験では興味深い結果が得られた。二重変異体はR8とR7の両者に表現型を示し、R8はM1、R7はラミナ内に停止する。これらを、野生型、あるいは脱リン酸化活性欠損型のLARを用いてレスキューしたところ、R7、R8ともに脱リン酸化活性型のLAR(すなわち野生型)ではR7の標的層であるM6に、脱リン酸化活性欠損型ではR8の標的層であるM3層に投射した。この結果はLARが視神経の種類、または投射の段階に応じて機能を変化させていることを示唆している。発生段階に応じた表現型の観察は求める遺伝子系統が致死である可能性があったため、いくつかの方法を試している段階であるが、基本的な系統の作成は完了しているため、計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はLarおよびPtp69Dの機能がお互いの機能に関わっている機構をさらに詳細に解析していくことを計画している。今年度までの研究により、R8軸索のみならず、R7軸索の伸長においても2つの脱リン酸化酵素が機能を重複していることが判明しているが、その機能は完全に一致しているわけでないことが示唆されている。今後はLARのみならずPtp69Dの機能解析も視野に入れてその違いを考察する実験を計画している。具体的にはPtp69Dの野生型、および脱リン酸化活性欠損型によるレスキュー実験、さらにLARとのコンビネーションによる機能解析を計画している。また、発生段階に応じた観察も作成した系統を用いて行う予定である。これまで明らかにされていないLarおよびPtp69Dの協調的な機能について来年度中に論文にまとめることができると考えている。
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Research Products
(4 results)