2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J40207
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
嶋田 容子 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 発達 / 乳児音声 / 唱和 / 重複 / 音楽性 |
Research Abstract |
人が声を重ね合わせることには、集団のむすびつきを強める効果があるとされ、音楽との関わりも示唆されている。乳児と養育者との間では、しばしば声の重複が生じるが、これまでの解釈は主として会話分析の視点からなされることが多く、音楽との積極的な関わりについて実証的な研究は多くはない。また音楽的とされる音には、テンポラルなリズムだけでなく、音の重なりによるハーモニーという要素があるが、重なりのもたらす効果についても十分な検討はなされていない。先行研究で、共同で音楽創りに従事した4歳児は、協力的行動を顕著に多くみせた(Tomasello, 2010)。本研究では、言語獲得以前および獲得期にある乳幼児を対象に、乳幼児と大人の声が重複する状況を実験条件として設定し、それぞれの条件における乳児の発声パターンを探った。 参加者 : 生後4ヶ月・12ヶ月・18ヶ月・24ヶ月の乳幼児。 手続き : ぬいぐるみ等のある乳幼児調査室において、乳児と調査者が下記の二条件で各10分間の自由遊びをおこない、その音声と行動を記録した。①重複条件 : 調査者が子どもの発声に対し即時応答で声を重ねる。②交替条件 : 調査者が子どもの発声に対して適当な間を取りターンテイキングの形で応答する。 結果 : 18ヶ月児・24ヶ月児において、重複条件で音楽的要素を含む行動(リズミカルな反復・バンギング等)が多くみられ、交替条件で社会的働きかけ(リーチング、乳幼児からの共同注意の自発、言語発話等)が多くみられた。4ヶ月児では、そのような条件差はみられなかった。12ヶ月児のデータは現在分析中である。 これらの結果から、言語獲得およびコミュニケーション形式の理解が進む過程で、重複するコミュニケーション形式への理解と利用が起きている可能性、また重複の形式で音楽的要素に関連する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に沿ったデータ取得がおおむね進行している。一部月齢で自発的音声が充分に得られないなどの理由で有効データがまだ不足しているが、横断データの追加取得を進めている。一方で、二年目に予定していた自閉症を対象とした調査の準備として、昨年度に京都大学医学部児童精神科の協力を得て、自閉症児の発達診断に週に一度のペースで関わることができたため、予備的な観察と今後の調査への人脈が充分に得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
縦断的な記録が有効データにむすびつかない可能性があるため、引き続き横断データの取得を進める。特に高い月齢のデータが不足しているため、年度内早期に取得完了を目指す。昨年度に引き続いて、有効データ内における乳児の行動および音声の分析を進める。結果をまとめ、論文を投稿する。また、発達障害関連施設において、自閉症スペクトラム児を対象とした実験を実施する。定型発達児を対象に実施してきた内容とほぼ同様の調査を、対象時の療育に関わる作業療法士・言語聴覚士の協力を得て実施する予定である。この成果は中間的な報告として、日本発達心理学会・自閉症学会等で発表する。
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