2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J40207
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
嶋田 容子 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 乳幼児 / 音声 / 唱和 / 音声の重複 / 音楽性 / 社会性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生後4ヶ月から24ヶ月の乳幼児を対象に、自由遊びの中で大人が乳幼児に音声を重複させる条件および交替させて応答する条件を設定し、それぞれの条件における乳幼児の発声パターンを探った。 参加者 : 生後4ヶ月・12ヶ月・18ヶ月・24ヶ月の乳幼児、各18名。 手続き : ぬいぐるみ・積み木などの玩具のある乳幼児調査室において、乳児と調査者が下記の二条件で各10分間の自由遊びをおこない、その際の乳幼児の音声と行動をビデオで記録した。重複条件では、調査者が子どもの発声に対し即時応答で声を重ねた。交替条件では、調査者が子どもの発声に対して適当な間を取りターンテイキングの形で応答した。どちらの条件でも、大人の発声内容は、対象児の直前の発声を模したものとした。各条件の順序は被験者間でカウンターバランスをとった。 結果 : 18ヶ月児・24ヶ月児において、重複条件で音楽的要素を含む行動(リズミカルな反復・バンギング等)が多くみられた。また交替条件では、社会的働きかけ(リーチング、乳幼児からの共同注意の自発、言語発話等)が多くみられた。一方、より低月齢の4ヶ月児と12ヶ月児では、そのような条件の差は有意ではなかった。これらの結果から、12ヶ月から18ヶ月の間の、言語獲得およびコミュニケーション形式の理解が進む過程において、音声が重複するコミュニケーション形式への理解が発達している可能性、また重複の形式が音楽的要素の発生に関連する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
唱和場面の自然観察ビデオを分析した結果、24ヶ月児で唱和と音楽的行動の表出が関連した可能性が示された。実験研究では、当初の目標であった定型発達児の各月齢のデータ取得を完了し、現在データ分析を進めている。自閉症スペクトラム児について、京都大学医学研究科での発達アセスメント実施を通じて多くの知見を得たほか、協力施設にて予備データを取得した。これらの成果を日本心理学会等で発表したほか、観察データに関する論文を海外学術誌に投稿中である。また、本研究に関連する保育関係者向けの一般講演を複数回おこない、保育現場への成果の還元に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに取得した実験データの分析を進め、成果を論文にまとめて学術誌への掲載を目指す。音声分析に関しては、音声重複部分の扱いが非常に困難であるため、技術的に分析の可能な重複前後の音声を抽出し、唱和条件における発声の特徴を明らかにする。発達障害に関しては、療育への還元を前提に、療育施設と協力して研究を進める。療法士が唱和を意図的にもたらした場合に、対象児の社会的・音楽的はたらきかけが増加する可能性を検討する。この研究では、実験的設定が自発的な唱和の効果を妨げる可能性があるため、通常の療育場面での観察ビデオを分析対象とする。これらの研究成果をまとめて国内外の学会で発表するほか、国際学術誌に投稿する。また、乳幼児との音声コミュニケーションについて保育関係者向けに知見をまとめ、保育関連の一般誌等への発表をおこなう。
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Research Products
(4 results)