2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14001001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大峯 巌 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60146719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 真司 自然科学研究機構, 分子科学研究所, 教授 (70262847)
田中 秀樹 岡山大学, 理学部, 教授 (80197459)
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Keywords | 水 / 水素結合 / 揺らぎ / 氷化・融解(相転移) / 非線形多次元分光法 / ラマン分光法 / 電荷移動 / 水和 |
Research Abstract |
「水の多様性の発現機構」に関する次の5つの課題について研究を進めた 1)低温の水の水素結合構造とそのダイナミックスの解明;低温の水には低密度の液体(LDL)と高密度液体(HDL)の2つの状態があると考えられている。我々はフラグメント解析法を開発して水素結合ネットワークの性質を調べ、LDLでは15種類の基本的フラグメント構造によってほとんどの空間が埋め尽くされており、各々のフラグメントの生成には互いに強い相関があることを見つけた。すなわち、LDLとHDLの間には(疑似的)相転移が存在し得ることの理由を初めて理論的に示した。さらに、過冷却状態における周波数依存の熱容量が如何に変化するのか、またそのダイナミックスと分極率の3次応答関数などとの関係を明らかにした。 2)「水の結晶化、融解現象の分子機構」の解明をさらに進めた。フラグメント解析を用い、初期核の構造とその成長過程の様相を明らかにした。 3)高次非線形、特に2次元ラマン分光の理論的解析;液体の低周波運動の様相を探る新しい実験手段として2次元ラマン分光法の理論的解析を行い、この方法が非線形的運動に非常に敏感であり、水の氷化現象の初期過程の検出などにも用い得る方法であることなどを明らかにした。 4)イオンの水和構造についての研究。水分子の自己解離定数とその温度依存性の理論的計算を行いその完全な再現に成功した。その解析により、この機構における水和構造・相互作用の長距離性、周りの水分子への電子移動の長距離移動の様相などを明らかにした。また温度が高くなればなるほど、解離イオンの水和全エネルギーの安定化が大きくなること(これは、常識と逆)を見つけ、その原因を明らかにした。これは超臨界水の高い反応性とも関係している。現在、表面におけるイオンの水和構造の特徴についても研究を進めている。 5)また蛋白質(生体高分子)の反応ダイナミックス、特に光励起黄色蛋白質(Photoactive Yellow Protein ; PYP)の光サイクルの研究、またイオンチャンネルモデル系におけるイオン輸送の現象などを明らかにしてきた。
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