2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14014241
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
林 哲也 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (10173014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸邉 亨 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (70207596)
中山 恵介 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (10347057)
大西 真 宮崎医科大学, 医学部, 助教授 (10233214)
飯田 哲也 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (90221746)
清水 徹 筑波大学, 基礎医学系, 助教授 (80235655)
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Keywords | 病原性大腸菌 / ウェルシュ菌 / 腸炎ビブリオ / ゲノム / 病原性 / 発現制御ネットワーク / マイクロアレイ / PCR |
Research Abstract |
本研究の解析対象である病原性大腸菌・ウェルシュ菌・腸炎ビブリオに関して、それぞれ以下の知見を得た。 【病原性大腸菌】O157堺株の全ゲノム配列に基づいて、大腸菌ゲノムを約10Kb単位で増幅できるPCRシステムを構築し(whole genome PCR scanning(WGPS))、8株のO157臨床株の全ゲノム構造を解析した。その結果、O157菌株間には予想以上の多様性が存在し、ラムダ様プロファージ領域には特に大きな違いがあることが明らかになるとともに、WGPSという新しいゲノム解析法を確立できた。発現機能解析に関しては、堺株の全ての付着因子候補遺伝子をクローン化して機能解析を行い、非病原性大腸菌に細胞付着能を付与する遺伝子を新たに見いだした。堺株のゲノム配列から見いだされた新規III型分泌装置(ETT2)についても解析を行ったが、通常の条件下ではほとんど発現せず、ETT2依存性の分泌蛋白質も見いだせなかった。ただし、O157菌株ではETT2の全体が保存されているのに対し、O26やEPECでは半分の領域のみが保存されていた。また、堺株のゲノム配列を基づいてオリゴDNAマイクロアレイを作製し、アレイ解析の至適条件を決定した。 【ウェルシュ菌】約2800の全遺伝子をスポットしたDNAマイクロアレイを作製した。解析条件の至適化を行った後、VirR/S 2成分制御系の変異体と野生株を用いたアレイ解析を行ない、VirR/S系が約400の遺伝子の発現に関与することを見いだした。この中には病原遺伝子の他にエネルギー代謝系や機能未知遺伝子も多数含まれており、ウェルシュ菌では病原性と菌の増殖とが密接に関連していることが示唆された。 【腸炎ビブリオ】全ゲノム配列決定を完了し、新規pathogenicity islandや多数の病原性関連遺伝子を見いだした。さらに、コレラ菌との全ゲノム比較により、2つの菌種間で大規模なゲノム再構成が起きていること、第2染色体の遺伝子構成には大きな違いがあることを明らかにした。また、患者血清を用いたウエスタンブロット解析により、生体内で産生され抗原として認識される蛋白質を新たに5種類同定した。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] M.Ohnishi, et al.: "Genomic diversity of Escherichia coli O157 revealed by whole genome PCR Scanning"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 99. 17043-17048 (2002)
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[Publications] H.Abe, et al.: "Bicarbonate ion stimulates the expression of locus of enterocyte effacement-encoded genes in enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7"Infect.Immun.. 70. 3500-3509 (2002)
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[Publications] Makino, S., et al.: "Distribution of the secondary type III secretion system locus found in enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7 among Shiga toxin-producing E.coli"J.Clin.Microbiol.. (in press).
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[Publications] Shimizu, T., et al.: "Proteome and transcriptome analysis of the virulence genes regulated by the VirR/VirS system in Clostridium perfringens"J.Bacteriol.. 184. 2587-2594 (2002)
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[Publications] Ohtani, K., et al.: "The luxS gene is involved in cell-cell signaling for toxin production in Clostridium perfringens"Mol.Microbiol.. 44. 171-179 (2002)
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[Publications] Tagomori, K., et al.: "Comparison of genome structures of vibrios, bacteria possessing two chromosomes"J.Bacteriol.. 184. 4351-4358 (2002)
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[Publications] Iida, T., et al.: "Filamentous bacteriophages of vibrios are integrated into the dif-like site of the host chromosome"J.Bacteriol.. 184. 4933-4935 (2002)
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[Publications] Makino, K., et al.: "Genome sequence of Vibrio parahaemolyticus : a pathogenic mechanism distinct from that of V. cholerae"Lancet. 361. 743-749 (2003)
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[Publications] 林 哲也, 大西 真: "大腸菌O157のゲノムと出血性大腸炎"現代医療. 34. 103-108 (2002)
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[Publications] 大西 真, 林 哲也: "腸管出血性大腸菌O157のゲノムの多様性"日本臨床. 60. 1077-1082 (2002)
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[Publications] 林 哲也, 大西 真: "腸管出血性大腸菌O157の遺伝的多様性とその分子基盤"最新医学. 58. 136-141 (2003)
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[Publications] 林 哲也: "I. ゲノム微生物学概論 ゲノムからみた病原細菌"日本臨床 新世紀の感染症学(下) -ゲノム・グローバル時代の感染症アップデート-. 61. 414-422 (2003)
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[Publications] 林 哲也: "II. 感染症の遺伝子学 大腸菌"日本臨床 新世紀の感染症学(下) -ゲノム・グローバル時代の感染症アップデート-. 61. 696-702 (2003)
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[Publications] 戸邉 亨: "腸管出血性大腸菌の腸上皮細胞への付着と宿主感染の分子病態"日本臨床. 60. 1060-1063 (2002)
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[Publications] 清水 徹: "II. 感染症の遺伝子学 クロストリジウム属(ウェルシュ菌など)"日本臨床 新世紀の感染症学(下) -ゲノム・グローバル時代の感染症アップデート-. 61. 671-676 (2003)
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[Publications] 飯田 哲也: "II. 感染症の遺伝子学 ビブリオ属(コレラ菌,腸炎ビブリオ,ビブリオ・バルニフィカス)"日本臨床 新世紀の感染症学(下) -ゲノム・グローバル時代の感染症アップデート-. 61. 722-726 (2003)