2004 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌の粘膜感染を決定するエフェクター蛋白質と宿主因子の相互関係の解明
Project/Area Number |
14021011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹川 千尋 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70114494)
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Keywords | 感染 / 感染症 / 細菌 / 赤痢菌 / オートファジー / 病原性 / 細胞侵入 / RhoGTPase |
Research Abstract |
赤痢菌の感染成立におけるエフェクターの役割を解明する目的で、IcsBとIpgB1の機能解析を行った。IcsB変異株のオートファジー標的分子を検索した結果、赤痢菌の運動に必要な外膜タンパク質VirGがオートファジーの標的となることが示された。赤痢菌がオートファジーに認識される理由は、オートファジーの初期形成に関わるAtg5がVirGへ結合することに起因したが、野生型赤痢菌では、細胞内で分裂・増殖・運動する過程で、Atg5の標的となるVirG領域にIII型分泌装置を通じて分泌されるIcsBが競合的に結合することにより、オートファジー形成を阻止していることが判明した(Science 2004)。IpgB1は、赤痢菌の感染初期にIII型分泌装置を通じて分泌されるエフェクターであるが、その役割は不明であった。IpgB1変異株の細胞侵入効率は、野生株に比べて約50%低下したが、逆にIpgB1過剰産生赤痢株では侵入効率が野生株の約20倍へと飛躍的に増加した。一方、IpgB1を上皮細胞へ強発現させると、その発現量に比例してラッフル膜形成能が促進しまたラッフル膜面も拡張した。IpgB1に誘導されるラッフル膜形成は、宿主細胞のRac1およびCdc42の活性に依存していた。事実、ドミナントネガテイブRac1あるいはCdc42変異体を上皮細胞に発現させるとIpgB1により誘導されるラッフル形成は著しく阻害された。同様に、Rac1あるいはCdc42に特異的なsiRNAを導入しても、IpgB1に誘導されるラッフル膜形成は阻害された。また、ゲラニルゲラニル化を特異的阻害する薬剤で処理した細胞では、赤痢菌の感染あるいはIpgB1により誘導されるラッフル膜形成も著しく阻害された。したがって、IpgB1は宿主因子と何らかの相互作用を通じてRhoGTPaseを活性化する機能を有すると推定される。
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Research Products
(6 results)