2002 Fiscal Year Annual Research Report
海外からの新技術を受入れる基盤となった塗装技術の実証的研究-江戸大名屋敷出土器物資料を中心にして-
Project/Area Number |
14023219
|
Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
増田 勝彦 昭和女子大学, 文学部, 教授 (40099924)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門倉 武夫 東京都埋蔵文化財センター, 調査研究部, 嘱託研究員
上條 朝宏 東京都埋蔵文化財センター, 調査研究部, 主任調査研究員
武田 昭子 昭和女子大学, 文学部, 教授 (50124326)
|
Keywords | 塗装技術 / 江戸時代漆工技術 / 塗膜の保存科学的調査 / 大名上屋敷出土器物 / 近世の塗装技術の変遷 |
Research Abstract |
本研究の目的は、江戸時代漆工品とその周辺の器物資料をとおして、江戸時代塗装技術がどのようにして明治以降の技術に変遷していったかを、保存科学的調査より実証的に明らかにしていく。このため、塗装製品として縄文時代から現在まで途絶えることなくその歴史を辿ることができる漆製品のうち、出土器物を対象に考察を加えることとした。江戸時代は工房が互いに競い合い様々な技法を用い、漆工技術が頂点に達した時期と言われている。江戸時代の大名上屋敷であった尾張藩上屋敷跡遺跡、加賀藩上屋敷跡遺跡、および比較資料として、市中に位置していたと考えられる外神田遺跡からの出土器物を調査対象とした。 本年度は、対象遺跡の遺物調査を実施し、その中から各遺跡より約10点、総計30点ほど、光学顕微鏡を用いた科学的調査を主に実施した。この中で精査を必要とする試料数点については、EPMA等で分析を行った。光学顕微鏡による塗膜断面調査では、上屋敷から出土した器物は地の粉漆下地に多層塗り、市中から出土した器物は、炭粉柿渋下地で単層塗りとなっていた。市中の器物の塗装は、目視観察からでも簡便な塗りのものが多く、大量生産に見合う技術と材料を用い、種々の工夫がなされていたと思われる。大名屋敷でも、出土地点よって器物の塗装技術も変化するようである。今後考古学的知見を含め検討していく必要がある。 尾張藩屋敷跡では塗りの道具も検出されており、屋敷内で簡単な補修など行われていた可能性を伝える。また、その中の漆の保存に転用された椀蓋の塗膜に、現在では使われない、また当時の技法書などにも載っていない薬剤が検出されている。これについては類例を集め、この塗装技術がどこからもたらされたのか、他にも工夫がなされていたか、2年目の課題となっている。
|