2002 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインシグナルを分子基盤とした癌細胞の増殖制御機構の解析
Project/Area Number |
14028050
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田賀 哲也 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (40192629)
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Keywords | 細胞増殖 / サイトカイン / シグナル伝達 / 転写因子 / c-Kit / gp130 / p53 / STAT3 |
Research Abstract |
サイトカインシグナルの異常が白血病や多発性骨髄腫などの癌においてその発症ならびに癌細胞増殖に関与することが知られている。本研究はサイトカインシグナルの観点から癌細胞の増殖促進と増殖抑制の新たな分子基盤を得ることを目的に行われた。 (1)造血前駆細胞増殖誘導性サイトカインSCFの受容体c-Kitの変異体が白血病細胞で同定されている。c-Kit結合性アダプター分子Lnkの胎生期造血組織AGMにおける造血前駆細胞増殖に果たす役割を検討した。マウスAGM組織の分散培養系へのLnk発現ベクター導入あるいは、Lnk欠損マウスAGM分散培養などの結果からLnkはAGM細胞の造血前駆細胞増殖を抑制することを見いだした。 (2)IL-6ファミリーサイトカインの信号伝達に必須の膜蛋白gp130の下流で機能する転写因子STAT3は、癌遺伝子的役割が示唆されている。AGMの造血前駆細胞の増殖におけるgp130とSTAT3の役割を検討した。gp130欠損マウスのAGM分散培養からはCD45陽性の血球系の細胞増殖がほとんど見られなかった。gp130欠損マウスあるいは正常マウスのAGM分散培養系に野生型や変異型gp130、優性抑制型STAT3を導入して造血前駆細胞の増殖を定量する実験などにより、STAT3の重要性が示された。 (3)増殖を正に制御するSTAT3と負に制御するp53とのシグナルクロストークの観点から進めた実験により、STAT3のセリン727残基リン酸化酵素HIPK2がSTAT3とp53の双方と物理的会合能力を有していることがわかり、正負の細胞増殖シグナルの接点についての新しい糸口を得た。 サイトカインシグナルの破綻による細胞の異常な増殖が発癌に至る機構の一つであることを考慮すると、本研究の知見は発癌の仕組みの解明ならびにその抑制法の開発に関して興味深い示唆を与えるものと考える。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Takizawa, M., Nobuhisa, I., Igarashi, K., Ueno, M., Nakashima, K., Kitamura, T., Taga, T.: "Requirement of gp130 Signaling for the AGM hematopoiesis"Experimental Hematology. (in press). (2003)
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[Publications] Uemura, A., Takizawa, T., Ochiai, W., Yanagisawa, M., Nakashima, K., Taga, T.: "Cardiotrophin-like cytokine induces astrocyte differentiation of fetal neuroepithelial cells via activation of STAT3"Cytokine. 18. 1-7 (2002)
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[Publications] Hatta, T., Moriyama, K., Nakashima, K., Taga, T., Otani, H.: "The role of the gp130 signal in cerebral cortex development : in vivo functional dissection analysis by mouse exo utero development system"Journal of Neuroscience. 22. 5516-5524 (2002)
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[Publications] Kimura, N., Takizawa, M., Okita, K., Natori, O., Igarashi, K., Ueno, M., Nakashima, K., Nobuhisa, I., Taga, T.: "Identification of a novel transcription factor, ELYS, expressed predominantly in mouse fetal hematopoietic tissues"Genes and Cells. 7. 435-446 (2002)
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[Publications] Nakashima, K., Taga, T.: "Mechanism underlying cytokine-mediated cell fate regulation in the nervous system"Molecular Neurobiology. 25. 233-244 (2002)