2002 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞中でのみ機能する、全く新しい原理に基づいた化学療法剤の開発
Project/Area Number |
14030023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浦野 泰照 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (20292956)
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Keywords | 光増感剤 / 蛍光プローブ / 光誘起電子移動 / 光線力学治療 / ローズベンガル / 一重項酸素 / がん / 酸化ストレス |
Research Abstract |
本研究は、正常細胞とがん細胞を見分け、がん細胞でのみ機能するPDT(Photo Dynamic Therapy)型抗がん剤を開発することを目的としている。すなわち今までとは全く異なるタイプの化学療法剤として、がん細胞認識に関わる部分と細胞に障害を与える部分を併せ持ち、がん細胞に特異的なマーカー分子や酵素類を認識するとはじめて細胞障害能を発揮する、新規抗がん剤のデザイン・開発を行う。昨年度までの研究から、光増感剤の増感能は光誘起電子移動(PET)過程により制御可能であることが明らかとなったため、本年度はまずPETにより増感能の制御されたプローブの最適化を目的とし、光褪色性を指標とした増感能評価を行った。その結果、光褪色の少ない理想的な数種の増感骨格を決定することに成功した。次にがん細胞であるという条件として細胞内の酸化的環境に着目し、この可視化が可能な蛍光プローブのデザイン・合成・評価を行った。その結果、高い酸化能を有するハイドロキシルラジカルやパーオキシナイトライト、パーオキシデースの酸化活性種のみを選択的に検出可能な蛍光プローブの開発に成功した。一方このプローブは、スーパーオキサイド、過酸化水素や一酸化窒素といった、生体内情報伝達分子として機能することが知られている活性酸素種とは全く反応せず、また光による自動酸化も全く受けないことから、がん細胞に特徴的な酸化的環境を高い信頼性を持って検出することが可能であることが期待される。さらに一重項酸素とも全く反応しないことから、PDT型抗がん剤の土台として理想的であることが明らかとなった。現在、開発した数種の新規PDT型増感剤を実際の生細胞に適用し、細胞傷害能を指標として、色素濃度、照射時間などの最適化を行っている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Ken-ichi Setsukinai: "Development of Novel Fluorescence Probes That Can Reliably Detect Reactive Oxygen Species and Distinguish Specific Species"J. Biol. Chem.. 278(印刷中). (2003)
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[Publications] Motohiro Nishida: "Gi and Go as a redox sensor"J. Biol. Chem.. 277. 9036-9042 (2002)
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[Publications] Satoko Maruyama: "A Novel, Cell-Permeable, Fluorescent Probe for Ratiometric Imaging of Zinc Ion"J. Am. Chem. Soc.. 124. 10650-10651 (2002)
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[Publications] 浦野 泰照: "PET理論と蛍光プローブ"現代化学. 381. 44-50 (2002)
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[Publications] Tomoya Hirano: "Improved Fluorescent Probes for Zinc, ZnAFs, Suitable for Biological Applications"J. Am. Chem. Soc.. 124. 6555-6562 (2002)
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[Publications] Hideo Takakusa: "Design and Synthesis of an Enzyme-Cleavable Sensor Molecule for Phosphodiesterase Activity Based on Fluorescence Resonance Energy Transfer"J. Am. Chem. Soc.. 124. 1653-1657 (2002)