Research Abstract |
(1)治療前のWT1レベルと予後(CR持続か,再発か)との関係については,予後とは,骨髄でのWT1レベル及び末梢血でのWT1レベルともに相関が見られなかった。 (2)地固め療法後のWT1レベルと予後との関係については、骨髄でのWT1レベルを2000(コピー/μgRNA)未満と2000以上に分けると,2000未満の9人は全員ともCRを持続したが(600日),2000以上の11人は全員再発した(症例数が少ないので有意差なし)。また,末梢血でのWT1レベルを300(コピー/μgRNA)未満と300以上に分けると,300未満の24人の無病生存率は60%(600日)であったが,300以上の11人は全員再発した(症例数が少ないので有意差なし)。治療前のWT1レベルと予後に関しては,1994年Bloodに発表した我々単独の研究では、治療前のWT1レベルと予後が逆相関したが、今回の研究では相関が見られなかった。この原因については,AML97治療プロトコールが、我々の治療(各施毎に雑多な治療を行なっていた)に比し,強力な治療効果をもつため,WT1レベルの高いものも,CRに入り,長期生存したものと考えられる。地固め療法後のWT1レベルと予後との関係については、症例数の蓄積をもって、統計的有意差が出るようにしたい。本研究によって,地固め療法後のWT1レベルが予後と相関することが,はじめて明らかになった。 (3)BMT前のWT1レベルの測定によるMRDは,骨髄,末梢血ともに,AMLとALLとで差がなかったが,CMLではAML, ALLに比し,有意に高かった。 (4)BMT前のWT1レベルの測定によるMRDは,骨髄,末梢血ともにAMLとALLにおいては,第1寛解(CR)期,第2CR期,第3CR期ともに,有意差がなかった。 (5)BMT後の再発率と,WT1レベルの測定によるMRDとの関係については,BMT1ヵ月後のMRDと再発率とは相関がなかったが,BMT前のMRDと再発率が相関した。 以上いくつかの新知見の中で,予期に反して,再発率がBMT後のMRDと相関するのではなく,BMT前のMRDに相関することがはじめて明らかになった。このことは,最も重要な知見であり,今後のBMT後の再発を減らすための方策に大きな示唆を与えた。
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