2002 Fiscal Year Annual Research Report
ガングリオシドGM3合成酵素(シアル酸転移酵素-1:ST3 GaIV)の遺伝子発現とその生物機能の応用
Project/Area Number |
14030085
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
齋藤 政樹 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (60012762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 恵子 明治薬科大学, 薬学部, 助手 (90312074)
菱沼 滋 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (70211505)
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Keywords | ガングリオシド(GM3) / 糖転移酵素遺伝子 / シアル酸転移酵素 / 細胞増殖・分化制御 / 複合糖鎖分子(スフィンゴ糖脂質) / GM3合成酵素欠損マウス / 膀胱がん遺伝子治療 / 大動脈硬化アテローム形成 |
Research Abstract |
平成14年度は、以下の諸点を明らかにした:(1)ヒトガングリオシドGM3合成酵素(SAT-I)遺伝子導入による膀胱がん治療の試み(強発現系による遺伝子):昨年度われわれはヒトガングリオシドGM3合成酵素cDNAを発現ベクターpCEVkozにサブクローニングしてヒト大腸癌HCT116細胞に導入し、産物ガングリオシドGM3の大量誘導、形態変化(分化誘導)、アポトーシス誘導を見出した。一方、協同研究者大山ら(東北大学医学部・泌尿器科)により昨年度に:(1)ガングリオシドGM3は、悪性度の高い浸潤性膀胱癌に比べ、比較的良性の表層型膀胱癌で量的に増大している;(2)外来性のガングリオシドGM3は浸潤性膀胱癌の浸潤性を抑制する、の2現象が明らかにされた。これらの観察に基づき、新しい膀胱癌治療法として、SAT-I遺伝子導入法によるガングリオシドGM3過剰発現系を考案した。発現ベクターpMIKHygBにSAT-I cDNAをサブクローニングし、ガングリオシドGM3を欠損した浸潤型マウス実験膀胱がんMBT-2細胞に導入してStable Transfomants(MBT-2-SAT-I)を得た。このGM3過剰発現を呈する膀胱がん細胞MBT-2-SAT-Iでは、細胞増殖能、運動性、浸潤性並びにSyngeneic Miceのおける造腫瘍性(xenograft tumor growth)が著明に低下していた。S期にある細胞の比率に変化はなく、アポトーシスの顕著な誘導が制癌作用の本体であることが判明した。膀胱がん遺伝子治療への実用化を目指している。(2)ガングリオシドGM3のインスリン抵抗性並びに大動脈硬化(アテローム形成)への関与:肥満と深く関与する2型糖尿病の本体はインスリン抵抗性の獲得である。このkey mediatorがTNF-αである。TNF-αによって脂肪細胞(3T3-L1 adipocyte)に誘導されるインスリン抵抗性にはガングリオシドGM3合成酵素の活性化によるガングリオシドGM3発現増大が密接に関与していることが判明した。また、海外の協同研究者Dr.N.Prokazova(Mosow, Russia)らにより、ガングリオシドGM3がヒト大動脈細胞(intimal cells)のfoam cellsへの分化因子であり、アテローム形成に密接に関与していることが示唆された。(3)ガングリオシドGM3合成酵素の遺伝子ノックアウト細胞及びノックアウトマウスの樹立とその病態生理の解析:昨年度に引き続き、SAT-I遺伝子欠損マウスの作成を進め、現在、10数匹のヘテロ型マウスからホモマウスの作成を試みている。また、SAT-I遺伝子のdouble allele欠損のES細胞を作成し、その性格付けを進めている。
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[Publications] Tagami, S., Saito, M., et al.: "Ganglioside GM3 participates in the pathological conditions of insulin resistance"J.Biol.Chem.. 277. 3085-3092 (2002)
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[Publications] Mita, M., Saito, M., et al.: "Membrane depolarization-induced contraction of rat caudal arterial smooth muscle involves Rho-associated kinase"Biochem.J.. 364. 431-440 (2002)
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[Publications] Huang, J., Saito, M., et al.: "Differential regulation of cell migration, actin stress fiber organization and cell transformation by functional domains of Crk-associated substrate(Cas)"J.Biol.Chem.. 277. 27265-27272 (2002)
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[Publications] Miyake, I., Saito, M., et al.: "Activation of anaplastic lymphoma kinase is responsible for hyper-hosphorylation of ShcC in neuroblastoma cell lines"Oncogene. 21. 5823-5834 (2002)
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[Publications] Watanabe, R., Saito, M., et al.: "Ganglioside GM3 overexpression Induces Apoptosis and Reduces Malignant Potential in Murine Bladder Cancer"Cancer Res.. 62. 3850-3854 (2002)