2002 Fiscal Year Annual Research Report
蝶の翅のカラー・パターン形成と進化に関する理論的研究
Project/Area Number |
14034258
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
関村 利朗 中部大学, 応用生物学部, 教授 (40201587)
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Keywords | 蝶の翅 / カラー・パターン(色紋様)形成 / Papilio dardanu(オスジロアゲハ) / 数理モデル / 擬態 / パターンの進化 |
Research Abstract |
アフリカ大陸とマダガスカルに広く分布するアゲハチョウ科のオスジロアゲハ(Papilio dardanus Brown)は、雌にマダラチョウ科等の蝶の多くの種や亜種に擬態する十数種類の擬態型を有する蝶として古くから知られ、一方、雄は一種類の型しかなく、いわゆる尾(tail)を持つが、単純な白色と黒色からなるColor Patternをした羽を持っている。この蝶は世界で最も興味深い蝶の一種として、これまでイギリス、アフリカを中心として多くの研究が行われて来た。 このオスジロアゲハの翅のパターン形成と進化の問題を、発生遺伝学、遺伝子系統学、計量形態学、数理生物学などにおける学際的問題として、Vogler, A.P.(イギリス)、Heckel, D.G.(オーストラリア)、Nijhout, F.H.(USA),関村利朗(日本)を代表とする国際共同研究プロジェクト:蝶の翅のパターン形成と発生遺伝学に関するHuman Frontier Science Program(HFSP)プロジェクトが1999年に発足し現在に至っている。このプロジェクトの主な目的は、雌に限性遺伝をする擬態型を支配する遺伝子座のH-locusの同定とその作用機構の解明である。上記の4名のプロジェクト・メンバーはそれぞれ異なる方法論で問題の解明に当たっており、関村は主に数理モデルを使ってカラーパターン形成機構を研究している。 関村とイギリス・オックスフォード大学の共同研究グループは、カラーパターン形成の仕組みとして、細胞中の色素合成に対する反応-拡散方程式を解析し、"雄および雌の擬態多型パターンは原理的に蝶の羽全体に広がる色素合成に関わる物質(morphogen)の一種の縞紋様(stripe pattern)の現れであり、多型の紋様の差は羽全体の中における各細胞の感受性の差に帰着できる"、という仮説を提出した。この関村らの結果は、オスジロアゲハの雌の擬態多型が単に一つの遺伝子座H-locusによって制御されているというイギリスのClarkeやShepard等の実験結果とも合い通じるものであり、今後の実験的検証が待たれる。 上記のHFSPプロジェクトとほぼ歩調を合わせて、関村は中部大学において2001年より科学研究費(特定領域研究A:発生システムのダイナミクス)の助成を得てオスジロアゲハの飼育を開始し、2002年度中に累代飼育とDNA sequenceの解析につながる飼育への基礎を確立出来た。 参考論文: T.Sekimura, A.Madzvamuse, A.J.Wathen, and P.K.Maini, (2000). A model for colour pattern formation in the butterfly wing of Pailio dardanus. Proc. Roy. Soc. London B, Vol.267, pp.851-859.
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Madzvamuse, A., Maini, P.K., Wathen, A.J., Sekimura, T.: "A predictive model for color pattern formation in the butterfly wing of Papilio dardanus"Hiroshima Mathematical Journal. 32. 325-336 (2002)
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[Publications] Sekimura, T., Madzvamuse, A., Wathen, A.J., Maini, P.K.: "Pigmentation pattern formation in the butterfly wing of Papilio dardanus"MIRIAM(the Milian Research Center for Applied and Industrial Mathematics) jounal. (in press). (2003)
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[Publications] Madzvamuse, A., Thomas, R.D.K., Sekimura, T., Wathen, A.J., Maini, P.K.: "The moving grid finite element method applied to biological problems"In "Morphogenesis and Pattern Formation in Biological Systems". edited by T.Sekimura, S.Noji, N.Ueno, P.K.Maini ; Springer-Verlag, Tokyo. (2003)
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[Publications] 関村利朗, 阿江茂: "オスジロアゲハのWing Color Patternの研究-飼育・交配実験と理論モデルによる解析-"中部大学応用生物学部紀要. 2. (2003)
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[Publications] Toshio Sekimura, Sumihare Noji, Naoto Ueno, Philip K. Maini: "Morphogenesis and pattern Formation in Biological Systems -Experiments and Models-"Springer-Verlarg, Tokyo. 400 (2003)