2002 Fiscal Year Annual Research Report
多様化したソニックヘッジホッグカスケードによる神経管の発生制御(2)
Project/Area Number |
14034271
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
元山 純 理化学研究所, 病因遺伝子研究グループ, 上級研究員 (70321825)
|
Keywords | 分子生物学 / 発生学 / 神経発生 / 実験動物学 / マウス / 遺伝学 |
Research Abstract |
Gli3;Shh,二重欠損胚の解析によるGli3の前脳発生における機能 我々はGli2;Gli3;Ptc1三重変異体の解析によってSmoの腹側化シグナルがGli2やGli3を介して正中を決定することを示唆した。しかし遺伝子発現のパターンとGli3単独変異胚の解析から、Gli3がShhのシグナル伝達に直接関与するよりは、逆にShhシグナルに対し抑制的に働き背側領域の決定に関与することが示唆されていた。この事実を検証するために我々はShhとGli3を同時に失った二重変異胚を作成しその頭部形成を解析した。もしShhシグナルに対しGli3が抑制的に関与していればGli3の変異はShh単独変異胚に対しレスキュー効果を示す可能性がある。興味深い事に予想どうりGli3;Shh二重変異胚は単眼症を示すShh単独変異胚に比べ顕著に正常に近い形態を維持していた。眼は両眼が分離し前脳、間脳の形成も正中構造がかけている事を除けば正常に近い、もしくはGli3変異胚に似た脳構造を示した。前脳の背腹軸の形成がShh無しでもほとんど正常に形成されていた事は興味深い。 要約すると、発生過程にある神経管においてGli3は間接的にShhシグナルを抑制している。またGli3,Shhを共に失っても部分的な背腹軸が成立することから、正中から拡散したShhの勾配に非依存的に背腹軸は成立する事がわかった。更に、成果1で観察されたGli3の腹側化活性化の機能と成果2で観察された腹側化を抑制するという観察結果は矛盾する事から、Shhの有無、或いはGli2の有無によってGli3の機能がShhシグナルの伝達に対し活性化、抑制化に転換しうる可能性を示唆している。Gliの相同遺伝子産物であるショウジョウバエのCiはヘッジホッグの有無により機能の変換が起こる事が知られており、我々の結果はGli3がCiと同じ機能を持つ可能性を示唆している。
|
-
[Publications] Aoto, K., Nishimura, T., Eto, K., Motoyama, J.: "Mouse GLI3 regulates Fgf8 expression and apoptosis in the developing neural tube, face and limb bud"Developmental Biology. 25. 320-332 (2002)
-
[Publications] Katayama M, Yoshida K, Ishimori H, Katayama M, Kawase T, Motoyama J., Kamiguchi H.: "Patched and smoothened mRNA expression in human astrocytic tumors inversely correlates with histological malignancy"Journal of Neuro-oncology. 59. 107-115 (2002)
-
[Publications] 青戸一司, 元山 純: "ヘッジホッグシグナリング"分子細胞治療. 2. 92-93 (2003)