2003 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア翻訳系の特異な分子間ネットワークと機能特性
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14035206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 公綱 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (00134502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 典弘 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (60132982)
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Keywords | ミトコンドリア / リボソーム / EF-G / EF-Tu / 転座反応 / リボソームタンパク質 |
Research Abstract |
大腸菌のリボソームではRNAとタンパク質の比が2:1であり、約70%をRNAが占めている。それに対して、哺乳動物ミトコンドリアのリボソームではRNAが大腸菌の約半分に短縮し、代わりにタンパク質成分が増加し、RNAとタンパク質の比は1:3へと完全に逆転している。ミトコンドリアの起源が真正細菌であることを考慮すると、これは進化の過程において、RNAが担っていた機能的な役割をタンパク質が肩代わりしたことを示唆している。また、ミトコンドリアのリボソームは抗生物質に対する感受性などから細菌型リボソームに分類される。ミトコンドリア(mt)EF-Gは大腸菌リボソーム上で機能するが、大腸菌EF-Gはミトコンドリアリボソームでは機能しない。この一方向性の特異性がmtリボソームのどのような性質によって決定されるのかを検証した。EF-Gの特異性をリボソームとの相互作用によって誘起されるEF-GのGTPase活性を指標に評価したところ、mt EF-Gは大腸菌とミトコンドリアの両方のリボソームによってGTPaseが活性化されるのに対し、大腸菌EF-GのGTPaseはmtリボソームによって活性化されないことが明らかとなった。このことは、EF-Gの転座反応における特異性はリボソームとの相互作用によって誘起されるGTPaseの活性化の有無によって決定されていることが明らかとなった。さらに、リボソームにおいてEF-Gと直接相互作用することが知られているストークタンパク質L7/12が単独でEF-GのGTPaseを活性化させる機能を持つことが知られているため、大腸菌とmt L7/12の組換えタンパク質を調製した。組換えL7/12をもちいて大腸菌とミトコンドリアそれぞれのEF-Gに対するGTPase活性を評価したところ、mt EF-Gは大腸菌とミトコンドリアいずれのL7/12でも同程度にGTPが分解されるのに対して、大腸菌のEF-Gは大腸菌L7/12に比べてmt L7/12ではGTPの分解量が少ないという傾向がみられた。この結果は、EF-Gのリボソームに対する特異性がリボソームとの特異性、すなわちL7/12との機能的な相互作用によって決定されていることが示唆された。翻訳因子との相互作用に関わるたった1つのリボソームタンパク質L7/12を置換することにより、大腸菌とミトコンドリアのリボソームはお互いの翻訳因子を交換できることは興味深い。またこの結果は、完全に構成成分の異なる2つのリボソームが機能的にも等価であることを意味している。さらにmt L7/12のC末ドメインをもった大腸菌ハイブリッドリボソームにおける解析からEF-Tuの機能発現にはL7/12のC末ドメインとの機能的な相互作用が重要な役割を果たしていることが示唆された。このようにミトコンドリアと大腸菌のタンパク質合成系を比較することはタンパク質合成の粗過程の解明に有用であるといえる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Kamiya, N., Tanaka, T., Suzuki, T., Takazawa, T., Takeda, S., Watanabe, K., Nagamune, T.: "S-peptide as a potent peptidyl linker for protein crosslinking by microbial transglutaminase from Streptomyces mobaraensis"Bioconjugate Chemistry. 14. 351-357 (2003)
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[Publications] Nakai, Y., Umeda, N., Suzuki, T., Nakai, M., Hayashi, H., Watanabe, K., Kagamiyama, H.: "Yeast Nfs1p is involved in thio-modification of both mitochondrial and cytoplasmic tRNAs"J.Biol.Chem.. (In press). (2004)
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[Publications] Hino, N., Suzuki, T., Yasukawa, T., Seio, K., Watanabe, K., Ueda, T.: "The pathogenic A4269G mutation in human mitochondrial tRNAIle alters the T-stem structure and decreases the binding affinity of elongation factor Tu"Genes Cells. 9. 243-252 (2004)
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[Publications] Terasaki, M., Suzuki, T., Hanada, T., Watanabe, K.: "Functional compatibility of elongation factors between mammalian mitochondrial and bacterial ribosomes : Characterization of GTPase activity and translation elongation by hybrid ribosomes bearing heterologous L7/12 proteins"J.Mol.Biol.. 336. 331-342 (2004)
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[Publications] Soma, A., Ikeuchi, Y., Kanemasa, S., Kobayashi, K., Ogasawara, N., Ote, T., Kato, J., Watanabe, K., Sekine, Y., Suzuki, T.: "An RNA-modifying enzyme that governs both the codon and amino acid specificities of isoleucine tRNA"Mol Cell. 12. 689-698 (2003)
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[Publications] Kurata, S., Ohtsuki, T., Suzuki, T., Watanabe, K.: "Quick two-step RNA ligation employing periodate oxidation"Nucleic Acids Res.. 31. e145 (2003)
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[Publications] 鈴木 勉, 桐野陽平, 渡辺公綱: "RNA修飾異常と疾患"細胞工学(9月号)(秀潤社)特集「リボヌクレオーム:機能性 RNAが活躍する転写後の世界」(監修 鈴木 勉). 969-973 (2003)