Research Abstract |
蛋白質は立体構造を正しく形成して機能しているが,その構造は様々な環境要因によって一定ではない。これらの構造変化に分子シャペロンが密接に関与している。この分子シャペロンの機能発現機構とオリゴマー蛋白質の安定性,立体構造形成反応について詳細に研究した。 シャペロニンの機能発現の研究:大腸菌由来のシャペロニンGroELはその機能を果たすために,サブユニットを構成している3つのドメイン(赤道ドメイン,中間ドメイン,頂上ドメイン)のATP依存的なコンフォメーション変化を起こす。この構造変化の速度論的解析を,GroESやATP存在下で詳細に行い,GroELの各ドメインの動きの順序の特徴を明らかにした。一方,古細菌由来の耐熱性シャペロニンのクローニング,精製を行い,それらの機能発現機構にコバルトイオン,マンガンイオンが必要であることを明らかにした。また,これまでは知られていなかったADPase活性も有していることが判明した。 オリゴマー蛋白質の安定性と立体構造形成反応の研究:コシャペロニンである7量体蛋白質のGroESは,塩酸グアニジンによる変性反応で,まず7量体が解離して単量体になり,その後その単量体が変性するという,三状態転移を起こす。このときの構造安定性のエネルギー寄与のほとんどは,サブユニットが解離する反応にある。このことを更に詳細に研究するために,GroBSのサブユニットを互いに連結させたタンデムGroESを形成し,その構造安定性の評価と変性再生反応を詳細に調べた。その結果,サブユニットを連結したESC7は,蛋白質濃度が比較的低い時には,GroESオリゴマー蛋白質よりも安定性が高いが,蛋白質濃度が生体内濃度に匹敵するくらい高くなると,逆にGroESオリゴマー蛋白質の方が安定になることが判明した。また,ESC7はポリペプチド鎖が長いので,立体構造形成反応が複雑になることも分かった。これらの結果をもとに,オリゴマー蛋白質の構造的有利性をクローズアップした。
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