2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境ホルモンによるステロイド、サイトカインおよび増殖因子のクロストークへの影響
Project/Area Number |
14042216
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松田 正 北海道大学, 薬学研究科, 教授 (20212219)
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Keywords | 環境ホルモン / サイトカイン / ステロイド / 増殖因子 / クロストーク |
Research Abstract |
内分泌撹乱物質すなわち環境ホルモンは生殖腺の形成と機能に深刻な影響を及ぼすことが明らかにされつつある。環境ホルモンは主にエストロゲン/エストロゲンレセプターの仲介する生物学的機能に影響するものと考えられる。また、種々の細胞から分泌される生理活性ペプチドであるサイトカインや増殖因子は細胞の増殖分化に不可欠の液性蛋白であり、その異常産生は自己免疫疾患など種々の疾患の発症に深く関与している。本研究では環境ホルモンのこれら生体機能に重要な因子のシグナル系への影響を検討し、その人体汚染の分子メカニズムを明らかにする。本研究ではヒト胎性腎癌細胞株293T細胞にエストロゲンレセプターやそのレポーター遺伝子を導入することによってエストロゲンレセプターシグナルモデル系を、さらにサイトカインや増殖因子の活性をモニターしうるレポーター遺伝子を導入することによってサイトカインあるいは増殖因子のシグナルモデルを再構築した。エストロゲンレセプターの活性化は17β-エストラジオール(E2)や種々の環境ホルモンにより、サイトカインシグナル分子STATの活性化は293T細胞をIL-6やLIF(Leukemia inhibitory factor)で刺激することにより行ない、Smadの活性化は活性化タイプ1型TGF-βレセプターを発現させることにより行なった。これらの刺激を組み合わせることによって互いのクロストークを観察した。293T細胞を用いた再構成系においてエストロゲンレセプターを介したサイトカイン、増殖因子とクロストークが観察された。すなわち、増殖因子によるエストロゲンレセプターの活性化においてはクロストークが認められ、E2と同様に環境ホルモンも増強効果を示したが、サイトカインによるSTATの活性化においては環境ホルモンによってE2と逆の効果が観察された。現在、環境ホルモンによるサイカインによるSTATの活性化の分子メカニズムを詳細に解析している。これらの研究は環境ホルモンのサイトカインや増殖因子のシグナルを介した新たな生体機能への影響、人体汚染への分子メカニズムに迫るものである。
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[Publications] Yamamoto, T. et al.: "Cross-talk between bone morphogenic proteins and estrogen receptor signaling"Endocrinology. 143. 2635-2642 (2002)
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[Publications] Nakagawa, O. et al.: "Vasoactive intestinal peptide (VIP) enhances the cell motility of androgen receptor-transfected DU-145 prostate cancer cells (DU-145/AR)"Cancer Lett.. 176. 93-99 (2002)
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[Publications] Yamamoto, T. et al.: "The nuclear isoform of protein tyrosine phosphatase TC-PTP regulates Interleukin-6-mediated signaling pathway through STAT3 dephosphorylation"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 297. 811-817 (2002)
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[Publications] Sato, N. et al.: "Involvement of Heat-shock protein 90 in the interleukin-6-mediated signaling pathway through STAT3"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 300. 847-852 (2003)
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[Publications] Minoguchi, M. et al.: "STAP-2/BKS, an adaptor/docking protein, modulates STAT3 activation in acute-phase response through its YXXQ motif"J. Biol. Chem.. (印刷中).