2002 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子組換え担子菌を用いた内分泌攪乱物質分解システムの構築
Project/Area Number |
14042230
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
本田 与一 京都大学, 木質科学研究所, 助教授 (70252517)
|
Keywords | 環境ホルモン / バイオレメディエーション / 白色腐朽菌 / 遺伝子組換え / リグニン分解 |
Research Abstract |
担子菌類(きのこの仲間)のリグニン分解能力を利用して環境中の内分泌撹乱物質を分解除去する系は、他の生物には見られない多種多様な汚染物質に対して有効な点が特徴である。これは、担子菌の中でも白色腐朽菌類は、一般に菌体外に分泌するラッカーゼやペルオキシダーゼによって初発される連鎖的ラジカル反応によって、高分子リグニンの低分子化を促し、これによって生成する多様な芳香族有機化合物を分解・資化するとされている。このため、白色腐朽菌は多環式・複素環式芳香族化合物や高塩基置換性の芳香族化合物など、バクテリア等では分解が難しい毒性化合物の分解をできることが知られている。 しかし、天然から分離される担子菌は比較的成育が遅く、また分解系の発現が2次代謝的に行われているため、処理に時間がかかるということが、これらの系を実用化する際のボトルネックとなっている。本研究は、研究代表者が自ら開発を行ったリグニン分解性担子菌Pleurotus ostreatus(ヒラタケ)への遺伝子導入システム(特許出願済み)を利用して、リグニン分解系の機能が高度に高められた「遺伝子組換え担子菌」を作製し、汚染物質の分解除去に必要な培養条件を最適化することで処理の短時間化をはかり、担子菌を利用した内分泌撹乱物質のバイオレメディエーション技術を実用化に向けて大きく推進させることを目的としている。 白色腐朽菌ヒラタケの内分泌撹乱物質分解能を高度に強化する目的で、二価のカチオンの添加によって著しく転写を誘導するラッカーゼpoxA1b遺伝子のプロモーターを含むDNA断片を、Sanniaらが報告したPleurotus floridaのpoxA1bプロモーター配列をもとにオリゴDNAを合成し、これらをプライマーとして用いてP. ostreatus ATCC3766株から抽出したゲノムDNAを鋳型にしたPCRを行うことにより単離した。決定した塩基配列をP. floridaのpoxA1bプロモーター配列と比較したところ、一部にP. floridaの配列中に存在する5塩基のストレッチの欠失がみられたものの、全体としては98%程度の保存が見られ、この配列がP. ostreatusのpoxA1bホモログに由来するものであることが示唆された。 この配列を用いた組換え遺伝子発現系を作るため、ヒラタケマンガンペルオキシダーゼmnp3遺伝子のコード領域およびcDNA配列を含むプラスミドpIpMgおよびpIpMc上で、制限酵素的にプロモーター配列の置き換えを行って組換えプラスミドpTTgおよびpTTcの構築を行った。 次にこのようにして構築された発現プラスミドをP. ostreatus導入するため、PEG/CaCl_2法でプロトプラストの処理を行い、カルボキシン耐性マーカープラスミドpTM1との共形質転換を行った。選択薬剤としてカルボキシン2μg/mlを含む再生培地上でコロニーを作る形質転換体を複数単離した。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Watanabe, T., H.Teranishi, Y.Honda, M.Kuwahara: "A selective lignin-degrading fungus, Ceriporiopsis subvermispora produces alkylitaconates that inhibit the production of a cellulolytic active oxygen species, hydroxyl radical in the presence of iron and H_2O_2"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 297. 918-923 (2002)
-
[Publications] Enoki, M., Y.Honda, M.Kuwahara, T.Watanabe: "Chemical synthesis, iron redox interactions and charge transfer complex formation of alkylitaconic acids from Ceriporiopsis subvermispora"Chem. Phys. Lipids. 120. 9-20 (2002)
-
[Publications] 本田与一(共著): "キノコとカビの基礎科学とバイオ技術"アイピーシー. 564 (2002)
-
[Publications] 本田与一(共著): "木材科学講座11 バイオテクノロジー"海青社. 197 (2002)